観たいような、観たくないような、気にしていたけど少し敬遠していた映画。
「ホテル・ムンバイ」
Netflixで観れるようになったので、鑑賞。
感想、目の前で起こる無差別な殺傷に、事件が事実であることからもリアルに感じられ、胸が苦しかった…。何の予測もできず、いきなり消される命。家族や仲間が目の前で急に消されてしまう理不尽な状況。耐え難い時間が続く。この映画は観た方がいいのか、と問われれば、こう答えます。
Yes。。。
この他気になる映画紹介は
・「映画「対峙」という俳優の対峙!4人芝居が唸らせる脅威の111分!」
・「第93回アカデミー賞短編アニメ賞受賞のNetflix映画「愛してるって言っておくね」がおススメな理由」
をご参照ください。
目次
映画「ホテル・ムンバイ」は実話!このムンバイ同時多発テロは記憶にありますか?※本物画像
この事件は日本にもニュースになっていたのを覚えています。そして日本人がいたという話も。日本人1人がお亡くなりになったようでした。日本人がいたから痛ましいとか、そんなことではないけども、同国のことを案じる報道から突き刺さってくる現実は、対岸の火事というよりは隣人のことのように思えるのは否めない。
※朝日デジタルのニュース記事
映画「ホテル・ムンバイ」は実話!-あらすじ-
2008年11月26日。突如としてムンバイに銃声が鳴り響いた。ごった返す駅や旅行者に人気のレストラン、病院、映画館などで10件のテロが同時に発生した。29日に事態が終息するまで、死者は少なくとも172人、負傷者は239人にのぼった。イスラム過激派組織による犯行だった。
参照:映画ドットコム
映画「ホテル・ムンバイ」は実話!映画で垣間見る犯人たちの姿 ※ネタバレ
最初からテロの実行犯たちからの目線で始まる。これは生き残った犯人の一人の証言から組み立てられたシーンなのか…。
映画の中のワンシーンを少し列挙しておく。これは想像なのか、誰かの証言から生まれたシーンなのか、実行犯たちが青年であることが感じられる場面がいくつかある。ホテルのエレベーターの中に置かれたある料理をつまんで食べた青年に、仲間が「豚肉の入った料理を食べた」としてからかうシーン(豚肉は汚れたものとして食べない)。親に電話で(自分のテロ実行犯としての対価としての)現金が届いたか確認して、届いていないことを知るシーン。ドアが開かないことでムキになるシーン。唾をかけられてムキになるシーン。実行犯たちの心理描写は、あまりに幼稚、あまりにグル(支配者)に対して従順、且つ子ども。そんな実行犯たちの描写が多くあり、それがリアルなのか逆に怖い。
映画「ホテル・ムンバイ」は実話!一瞬にして消える命 ※ネタバレ
映画を盛り上げる為に消える命ではないから怖いのです。
そう、理不尽過ぎて、怖い。予期せぬ交通事故、予期せぬ銃乱射。まざまざと見せつけられる。映画「プライベート・ライアン」の冒頭20分のシーンも背中が寒くなったが、当事者の方も戦時中というある程度の予期と覚悟がある中。このテロは、まったくもって一方的に戦ってる側からの攻撃で、しかも予期せぬ銃撃。回避しようがないし、想像しようもない。改めて、ぞっとするのです。娯楽映画の中にあるような犯人がかっこよく描かれてる世界ではなく、生身の人間としても未熟さが怖さを露呈する。
映画「ホテル・ムンバイ」は実話!ここ重要!テロの動機から考える洞察 ※ネタバレ
“西洋からもたらされた資本主義によって、我々は貧しくなった。財産を奪われた。だから西洋人は人間じゃない、敵だ。あいつらのせいなのだ、殺せ、そして己の存在を示せ!”…と、そのようなことで青年たちを煽っていたグル。このイスラム過激派の動機として語れらた内容はそのような内容だった。
本当のところは分からないし、犯人を擁護する気持ちは毛頭ない。が、しかし、西洋人のせいではないにしろ、西洋から入ってきた資本主義という搾取主義のシステムが多いに問題があり、後から入ってきたこのシステムがあらゆるモノをお金に換算して奪っていったのは間違いない。後進国と呼ばれた第三世界の人々の無知に付け込み私腹を肥やすのが先進国の基本にあるのだから。この事件からも、本当は考えていかなければならない課題。この事件から13年経った現在、富める者と富めない者と二極化した状況がさらに加速して大きな問題になっている事実。見えない化されているモノを見た気がする。
映画「ホテル・ムンバイ」は実話!演技について考察
俳優トレーナー・アクティングコーチとしても活動している私から、やはり語らせてもらいたい部分です。もちろん、それは単なる、一個人の私見に過ぎないと分かっていても。
名前で呼ばれることがなかった俳優たち
名もなき英雄としてのホテルマンたちにスポットを当てた映画と宣伝されている。ホテルマンとしてのプライドやお客様優先の対応が、幾人もの人を救ったことを主軸にした映画であることは事実。しかし、犯人の“人間”としてのピュアさと残忍さにも少々光を当てた青年たちの演技にも賞賛を送りたい。
もちろん、一瞬で殺されてしまう俳優たちもまた然り。
ホテルの配膳役、デヴ・パテル
もはや名優だと思います、ホテルマンの主役を演じたデヴ・パテル。
体験してるんです、今そこで起きてることを。それが目に現れ態度にしっかりと現れている。何といったらいいか、いつも目が滲んでいる、とでも言おうか。こういう演技が出来る人は本当に素晴らしいし、安心して観ていられる。他の出演作品も是非。「LION/25年目のただいま」「スラムドッグ$ミリオネア」などなど。
ホテルの料理長役、アーミー・ハマー
頭の硬そうなこの人相が、お客様たちに対して大切な砦としてしっかり存在している。しかも、、、実はそんなに強くないのが外見ではなく行動にしっかりと出てくる。不安から小さな動きがちゃんと連動しており、型にはまらずに熱い料理長を演じています。他出演作「君の名前でぼくを呼んで」など。
映画「ホテル・ムンバイ」は実話!だから緊張感が継続されてるシーンの連なりが凄い ※ネタバレ
緊張感が途切れることなく続く映画。これは実は俳優が大いにその力を担っている。もちろん、それをつなぐ撮影や編集や音楽がそれをおさえていることは間違いない。上記俳優たち、役名の出てこない俳優たち、全体が空間を作っていた。恐らく全体がこの映画の理不尽さを感じてるし、またその命の上に立っていることを知っているからではないだろうか。先読みせずとも、テロが始まった瞬間から「命」の危険を「次がないかも知れない」時間を生きてるのを感じさせてくれる。SF「エイリアン2」、「クワイエット・プレイス」もそうだが、俳優が感じてることがちゃんと画面に出てくることが凄い。
映画「ホテル・ムンバイ」は実話!「ホテル・ムンバイ」アンソニー・マラス監督のインタビューも要チェック
半年にも及ぶ当時者のインタビューから事実を掘り起こし、映画にした作品だけに、その熱意を感じた。この映画は「ダイ・ハード」のブルース・ウィルス(のようなヒーロー)は登場しない現実(これは大好きですが)。子どもを助けるため、父親と母親が他人のフリをして生きる時間、しかも銃口を突きつけられたまま…。なんてシーンも事実を参考にしているそうです。胸が痛いですが、その痛みこそこの映画に価値あり、なのです。
映画「ホテル・ムンバイ」は実話!-まとめ-
この映画は観た方がいいか?それは「Yes」
このようなテロが起きることは、我々と繋がっていることなのだから。我々の日常の結果、何が起きてるのかを知ることは大切。我々日本人が格安のバナナを食べ、安い服を買い、安い油を使い、安価な珈琲を飲むのと実は全部繋がっていることなのです。その裏でどんな搾取が起きて、どんな自然や人間破壊の上に我々の日常生活が成り立っているのか、がこのようなテロに影響している可能性が大いにあると言えるのです。
このようなテロは、単に宗教上の戦いではないことが見て取れないだろうか。
この日本に住んでいると「あの国は環境破壊してバカじゃないの?」とか「自爆テロとかマジやめて欲しい」などと「単に我々以外の人たちがやっている」と思ってしまいがち。繰り返しになるが、日本において、この物が溢れた生活や安価な輸入品が成り立つのは、直接目の当たりにしていない世界があるから。自分たちが出した臭い物に蓋をしたその蓋のうえで、蓋の下に文句を言っているようなもの。なぜこのテロが起きたのかをSDG’sが叫ばれる今こそ読み解きなおしたい。それこそが、この事件を映画で蘇らせた大切な一因であるに違いないのだから。
-
クリスマスカード用のイラスト!手描きのための習作でデジタルを使うと便利
2025年明けてから昨年のクリスマスカードのことを書いてみま […]
-
巳年の新年ご挨拶用のイラスト2点!と上半期の展示について
あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いいたし […]
-
詩人、谷川俊太郎さんとの思い出!「生きる」が今も胸に生き動かす詩である理由
こんにちは、イラストレーター・絵描きをしている、ひころーるで […]