Netflixドラマ「クイーンズ・ギャンビット」のシンプルな面白さ!※ネタバレ


Netflixドラマ「クイーンズ・ギャンビット」
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Netflixドラマ「クイーンズ・ギャンビット」は全7話からなるミニドラマ。なので、とても見やすく、長編のドラマ映画として楽しめる作品。個人的には一気に観たかった作品だったが、子育てをしながらの為、スローペースで観て2ヵ月かかりました(笑)とてもシンプルでワクワクする物語。

それでもシーンはたくさん印象に残っているほど、映像演出がいい。そう、映像が実に美しい。大きな画面で観る方が断然カラーが際立って、ドラマの雰囲気をあげてくれます。男性優位社会の中で、淡々とチェスで勝利していく様は痛快。シンプルに言うと、女性版「グッドウィルハンティング」。薬物依存症がキーになっていますが、ざっくりに言うとそんな物語ですが、「グッドウィルハンティング」ほどの心を打ち破るお話ではない。しかし、そこがまた見やすくしていて、且つチェスの知性を映像美で見せ、人間ドラマは泥沼で表現しなかったことがこの作品の良さなのかも知れない。
※ちなみに「グッドウィルハンティング」は大好き過ぎる映画のひとつです。

Netflixドラマ「クイーンズ・ギャンビット」は全7話からなるミニドラマ

物語のシンプルさとその面白さ

物語の面白さは、ベス・ハーモン役の女優の魅力にも委ねられ、且つ知的なチェスという魅力がハマった作品。シンプルなサクセスストーリー。車での衝突事故で生き残った少女の内面の傷、埋めるかのように夢中になっていくものが用務員のおじさんことシャイベル(ビル・キャンプ)が教えてくれたチェス。気が付けばあっさりとシャイベルの力を越えて、高校のチェスクラブを教えている先生にも勝っていく。

ベス・ハーモン役の女優 アニャ・テイラー=ジョイ
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【あらすじ】
1950年代の児童養護施設で、人並外れたチェスの才能を開花させた少女は、依存症に苦しみながら、想像もしていなかった華やかなスターへの道を歩いていく。
(Netflix公式サイトより)

チェスのルールなんて分からなくても大丈夫

なぜなら、チェスの一手一手は、早くて、このドラマは、チェスの一手一手の状況を読み解くようなドラマではない。勝負の見せどころは、勝負そのものではなく、立ち振る舞い、所作。人物同士の真剣な眼差し、表情、そして交互に押すタイマーのボタンのリズムでリズミカルに勝負シーンが進行していく、とにかくかっこいい流れがある。観ていてワクワク感が出てくる演出に注目。なのでおススメドラマです。

チェスのバトルシーン
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用務員のおじさんが教えるチェス

もともとが用務員のおじさんが教えるというところが、個人的に好きなポイント。そのおじさんは、映画「ジョーカー」の刑事役のビル・キャンプ。かび臭い雰囲気とモテなさを醸し出していながら、沈黙ののち、少女だとしてもフェアに相手を認めていく様子が1話にしっかり描かれているからこ、後半に生きる。雑誌をお店で盗んで大会を知り、その出場費用の5ドルを、シャイベルに手紙で借りるところなんて、頼っていい存在とベスが感じられてしまう関係がここで育まれていく。そして、シャイベルの葬儀まで、いい存在でした。

少女のベス・ハーモン役は、アイラ・ジョンストンとシャンベル

エリザベス・ハーモン(ベス)役の2人

大人となっていく役を演じたのは、目力で話題のアニャ・テイラー=ジョイ。ナイト・シャマラン監督の「スプリット」「ミスター・ガラス」にもケイシー・クック役で出演。この時の黒髪やロン毛の印象とはほど遠いのが今回のベス・ハーモン役。彼女はもともとモデルデビューから女優業に入ったらしく、とにかく姿勢がいい。歩き方、また役としてもチェスの動かし方、所作などは独自に対応したそうだが、そこがいい。彼女のしなやかさがちょっとエロスを掻き立てる、それもまたこのドラマの魅力のひとつとなっている。ただし、セックスは意外とドライに描きます。

アニャ・テイラー=ジョイ

少女のベス・ハーモン役は、アイラ・ジョンストン。経歴は不明だが、物怖じせずにしっかりと相手を捉えて会話をする姿は、観る人を味方にする。だからこそ、ベスの視点で語られていくドラマに乗っていきやすい。用務員のシャイベルに食い下がったりするシーン、あの態度と視線。諸々、自分の子ども心をくすぐる(自分を思い出す)。大人にゲームで負けた時や、もっと知りたい時のアクションがさりげなくこちらに届くいい演技。

少女のベス・ハーマン役 アイラ・ジョンストン

助演 マリエル・ヘラー

義理の母親役は監督業もこなすマリエル・ヘラー。実は映画監督をされていて、直近ではトム・ハンクス主演の映画「幸せへのまわり道」を監督。
今回の役どころは、薬やお酒に依存しながら、あまりよろしくない母親役。かと思いきや、だんだんとベスと通わしていく心の交流がまた奇妙で目が離せない距離感。遠くから覗いてるけど、お金のいい匂いがしたらさっと近寄ってくるようないやらしいところがあるのに、寂しさが滲み出ていて、観る側としても突き放せない女性となる。苦く寂しい世界を背負いながらお酒で明るく生きてる姿は何とも言えないものを感じさせてくれた。
アルコール依存症だが、とことん見せる演出ではないので、憎んだり嫌いになる前に、突然の瞬間が訪れて、少し残念。もっと親子関係を見たかった。

マリエル・ヘラー監督作品

ハリーポッターのダドリー・ダーズリー役が大人になって出演

ハリーポッターを「1」しか見ていない私にとっては全く分からないが、しっかり見ている妻は「ええ!」ってなるほどの変貌ぶりだったそう。なぜならハリー・メリングが、ぽっちゃりなハリーポッターシリーズの頃とは見違えてすっかりほっそりとした大人になっているから。
今回の役名はハリー・ベルテックでベスに影響を与えるキーマン。優しくも自分を過大視して見せない様子や、弱々しさが、全面に出ていて他のキャラクターとしっかり区別される。中盤、ベスにチェスを教えながら心の孤独を抱えていく大きな葛藤がある役どころ。素朴でいい感じ。しかし欲を言えば、ぞっとするほどの寂しい背中が私は見たかったと言っておきたい。もちろん、ライトな感覚のドラマとしては今回はぴったり!

ハリーポッターに出演していたハリー・メリングがハリー・ベルテック役。

孤児院の友人ジョリーン役 モーゼス・イングラム

孤児院の先輩として、タバコや薬物を教授する。しかし、彼女がドラマで役割だけに徹した演技でなかった為、とても生きた女性として後半生きている。彼女は彼女自身の孤独と向き合いながら、相手に対して線引きがあり、その中で精いっぱい世界を見ようとしている。ベスが薬に溺れていく中、斜に構えながらも冷静に見つめているシーンは抑制が効いている。ベスが白人だからこそか、養母に迎えられ一足早く孤児院を出ていく姿を見送るジョリーンの嫉妬と寂しさ。それを隠そうとしながら、しっかり表出している。そんなジョリーンが最後は逆にベスを結果的に助けに向かう。
結果的にいい人過ぎるが、大人になった彼女が語る人生が、ちゃんと詰まった深い顔を見せてくれる演技力。こういうさり気なく詰まった人生を見せる女優が好き。そして、後半のアフロの大きさは圧巻(笑)

孤児院の友人ジョリーン役 モーゼス・イングラム

薬物・アルコール依存症の物語

この物語は、薬物依存症、アルコール依存症がテーマの1つとして含まれている。その視点で物語を観てみるとまた面白いかも知れない。しかし、ホントのテーマではないのでサラリとした梅酒(例えです、あしからず)。

孤児院で半ば強制的に飲まされた精神安定剤のカプセルは、ベスが夜中に天井にチェス盤と駒を想像で投影するのに必要なツールとなってしまうが、そのカプセルはやがて投与禁止薬物になり孤児院では配られなくなる。幼い頃にして既にその薬物依存症となってしまったベス。薬がなかなか手に入らないベスは、最後にはカプセルが保管された瓶をこっそり爆食いして失神。あらゆる何かの中毒者は、何をしてでもそれを欲しがるように、自制心の効かない少女ベスにとっては薬を我慢することは相当辛いものだったはず。しかし、その我慢の辛さを表現した箇所は思いのほか少ない。シーンとしては、禁断症状も特になく情緒不安定や精神不安定になることもなく・・・。そんなダークなシーンは時間的に不要だったかも知れないが、そのおかげでこの物語は暗い世界ではなく、ファッション的にも時代的も明るい雰囲気をちょいちょい醸し出す。

養母の元に引っ越した後、養母のアルマもまたその精神安定剤(中毒ではないが)を服用していた。ベスにとっては、薬との再会。簡単に手に入ってしまったため、ベスの薬物中毒は再開。養母アルマもまた、お酒を飲みアルコール中毒者だった。母として一緒にチェスの賞金目当てに旅をする中で、心を許していく関係になるが、そのアルマもまたアルコールが原因で死亡。再び一人になったベスもアルコールに溺れていく・・・。

これ以上のネタバレはあれだが、結局、その克服の仕方は、ライトな感じで訪れるからこそ、見やすい物語になっている事を言及しておく。そこがメインではないからだ。テーマがそこでないことは、彼女が最後に国境を越えて、路上のお爺さんと真っ白なコートを着てチェスを交わす終わり方が証明している。・・・のではないだろうか。

もし、薬物依存症の克服や後悔を目の当たりにしたいのであれば「バスケットボール・ダイアリーズ」「トレインスポッティング」「レクイエム・フォー・ドリーム」、アルコール依存症は「リービング・ラスベガス」を是非。

ブラックスワンの監督

まとめ

Netflixドラマ「クイーンズ・ギャンビット」チェス柄
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気が付けば世界的にヒットしたドラマとなっていてびっくりしました。強烈に凄いっていうドラマ性はなくとも、主演の魅力と映像美、映像演出がとても知的に感じさせてくれるドラマに仕上がっている。例えば、あの台詞やあの演技が胸に刺さる、という事ではないのですが、気が付けば見入ってしまう面白さ。

「クイーンズ・ギャンビット」は1983年に出版されたウォルター・テヴィスの同名小説が原作。苦難の末、世界的に有名な天才チェスプレーヤーになった孤児を追ったストーリーで、この小説が発表されて以来、ベルナルド・ベルトルッチ監督やヒース・レジャーなど大物が映画化しようとしてきたと言われている作品。

なぜ、薬物依存症という役がこれほど、ヒトを魅了するのだろうか。苦難を越えていくひとつのサクセスストーリーだからだろうか。自分を肯定する力になるからなのだろうか、或いは薬物から脱する願望を映画やドラマに託したいからだろうか。ヒース・レジャーもフィリップ・シーモアホフマンもリバー・フェニックスも・・・。これが男性の役だったら、彼らは飛びついただろうか、などとちょっと想像してしまう。

ダークサイドに行かない面白さと言ったらいいのか。チェスが世界的に売上を伸ばしたそう。ドラマの影響ってすごい。私も少しチェスを楽しんだことがあったのを思い出した。思い起こせば、ビリヤードに明け暮れた大学生時代、お金が底を尽いても遊べるもの、として友人と選んだのがチェスだった。何度か素人同士でプレイしたが、子どもの頃より将棋で慣らしてきた自分にとっては、ルールがうまくハマらずに・・・結局、ビリヤードに戻りました(笑)
今、実は妻とまたゆっくり始めようかと検討中。売上に貢献しそうな勢い。

BEHIND THE SCENE
The Queen Gambit

About ひころーる

イラストレーター ひころーる 2011年に「めぐりのおと」の絵本を描いてから 個展を5回開催し、どれも好評を得て 調子に乗って、受注販売をしたり イラストレーターのお仕事をいただいたり 非常に恵まれてきた環境です。 美大も美術系専門学校もでていない私が イラストや絵を描き続けられる環境にあることに 感謝しながら、コロコロと状況を お伝えしていきたいと思います。 ※活動が多岐に渡って経験を備えてきました。 それぞれ専門のブログやウェブサイトがありますので、 こちらはイラストレーターに寄せたものにしていきます。

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