第93回アカデミー賞短編アニメ賞受賞のNetflix映画「愛してるって言っておくね」がおススメな理由


第93回アカデミー賞短編アニメ賞を受賞したNetflix映画「愛してるって言っておくね」を既に3度鑑賞。この映画は時間にして、たった12分の短編アニメーション。そのたった12分に込められた映画の力に胸が絞めつけられる。この映画は見た方がいいかと問われれば、はっきり言える。

それは、Yes。

おススメしたい理由は、この映画は、アニメーション映画というアート表現が踏み込んだ救いの領域、とでも言うべき内容だからだ。もっと言えばこの作品が、小学校での銃乱射事件の被害者家族を主役に置いており、その辛いテーマにも関わらず、アニメーションで台詞がない演出によって、辛いテーマを懐柔していくように感じさせてくれるからだ。

まずは、どんな人が作って、どんな背景が今アメリカであったのか記述しておきたい。

「If Anything Happens I Love You」
「If Anything Happens I Love You」

Netflix映画「愛してるって言っておくね」って、どんな人が作ったの?

学校で起きた銃乱射事件で愛娘を亡くした両親の悲痛な思いと心の移ろいをスケッチ風のシンプルなイラストでつづり、第93回アカデミー賞で短編アニメーション賞を受賞した作品。監督・脚本は「トイ・ストーリー4」の原案や「セレステ∞ジェシー」の脚本で知られる俳優のウィル・マコーマックと、同じく俳優・脚本家として活動するマイケル・ゴビア。女優のローラ・ダーンがプロデューサーに名を連ねる。Netflixで2020年11月20日から配信。
映画.COM参照  <https://eiga.com/movie/94019/>

あらすじ

学校で銃乱射事件が発生し、突然の悲劇で我が子を失った悲しみと虚無感にさいなまれる両親の心のうつろいを描く。※Netflix参照

Netflix映画「愛してるって言っておくね」トレーラー

「愛してるって言っておくね」鑑賞前に、知っておきたい銃乱射事件のこと

銃規制が思うように進まないアメリカ社会にとって、銃乱射事件は珍しくはない事件となってきている。銃関係の会社から献金を受けている大統領がいたら、当然ながら一向に銃規制は進まない。
こんなデータがある。2021年が始まって3ヵ月半で、銃乱射事件は147件発生している。2020年の同時期は85件だったことから考えると、模倣犯や銃乱射事件に影響を受けて同様の事件が増えている可能性も高いと専門家は指摘する。
※データ参照:https://www.businessinsider.jp/post-233316

つまり、加害者も増えているが、被害者はもっと増えているということ。

「愛してるって言っておくね」が照らしたスポット

Netflix映画「愛してるって言っておくね」
Netflix映画「愛してるって言っておくね」

事件は時間と一緒に風化していく。どんなに大きな悲劇だとしても、ニュースに登場してこなくなったり、別の大きな悲劇が台頭してくると、人々の記憶からは薄れていく。しかし、被害者のご家族たちは忘れることは出来ないし、その後の生活を営んでいかなければならない。現実を直視する事も出来きずに忘れようと努力をしても、その努力をしながらも人生はなお続いていく。それは他人の目からは、想像の域を出ないし、スポットが当たらない場所かも知れない。その場面を、アニメーションという形で見せてくれた映画である。

本音を投影する影の存在が秀逸

Netflix映画「愛してるって言っておくね」
抑圧された心、影
Netflix映画「愛してるって言っておくね」
抑圧された心、影

この夫婦は、お互いに現実を受け止め切れず、帰ってくることのない娘のことをお互いに話題にしないようにしていた姿が食卓から感じられる。しかし、影は本音を語る。お互いに罵り合っているような、叫びあっているような姿が見える。その影は自由自在に動きを変えイガミ合っているように見えるが、それでも実は影だけがお互いに本音のようなもので関わり合っているようにすら感じられてくる。

娘についての話題を避けるあまり、触れないようにしてきた事で抑圧された心、それが影である。娘を思い出してしまうため、お互いに関わることを避けてしまってきた時間、抑圧してきた分だけ影がうごめいているかのよう。

しかし、夫婦がお互いに押し込めてきて、触れないようにしていた“娘”のことを思い出す時、モノクロだった現在の時間は、思い出に移りながらその世界は明るい色へと変化していく。思い出は財産であることを示唆する。過去から順々に思い出していった時、終盤にきっと思うのは「どうしてあの時・・・」というThe Day。「あの時、学校に行かせなければ」という後悔の念が垣間見れるシーンに胸が痛む。本音の気持ちが影となって娘が学校に向かうのを止めようとする。しかし、思い出の中の影に止めることは出来るはずがない。

しかし、触れない、思い出さない、忘れよう、とする事よりも、大事な思い出や共有した時間が、再びお互いの関わり合う時間を取り戻させるきっかけになるという裏返しが見事。その最後の影の形を是非とも見届けて欲しい。

こうやって言葉で書くと、「ああ、そうなんだね、理解した」と思うかも知れないが、理解することと、映像を見て体験することは全然違うもの。だから是非、12分の映画体験を勧めたい。

3回鑑賞して思うのは、「理解したい」という気持ち

Netflix映画「愛してるって言っておくね」
理解したい気持ち
Netflix映画「愛してるって言っておくね」
理解したい気持ち

映画を見て、自分の中で感想を持ち、映画について調べたりする。その映画が自分にとって“何”だったのかうまく言い表せなくてもその後の行動に繋がっていくことは大きな意味がある。そういう意味でひとつ言えるのは、その映画について理解したい、という気持ちが芽生えるかどうかが私には重要なのだということ。映画の内容が、意味不明だった、意味不明な場面があった、何か引っかかった、とても簡潔で良かった、色々な事を思いながらも映画鑑賞後の興味の持続があることは良くも悪くも映画に引っ張られているということ。例えば、自分の好きな人も、嫌いな人も、近くに居るとずっと気になるようなこと。この映画においては、特に「理解したい」という気持ち私を引っ張っている。

「愛してるって言っておくね」インタビュー記事、参照

Netflix映画「愛してるって言っておくね」
Netflix映画「愛してるって言っておくね」

当初からこれはアニメーション映画になる予定だった。私たちはこれの実写版では強烈すぎると思った。私たちはアニメーションが喪失と悲しみについての深い対話をするための完璧な玄関だと考えた。
—プロジェクトをアニメ映画にすることを決めたゴヴィア
※参照:https://thecinemaholic.com/is-if-anything-happens-i-love-you-a-true-story/

ー実写版だと強烈過ぎる、というコメントは頷ける。が、それを表現する実写映画人の力も大いに信じたい。今回のアニメーションのような実写があったっていいし、違った実写の表現があってもいい。いずれにせよ、映画には喪失と悲しみについての深い対話をするための素敵な玄関になることに異論はない。(山縣コメント)

たった12ページのスクリプトを完成させるのに1年かかった。
※参照:https://www.cartoonbrew.com/shorts/will-mccormack-michael-govier-on-if-anything-happens-i-love-you-oscar-shorts-interview-series-204163.html

ーなんて凄い時間の使い方だろう。1年、この事だけを仕事に準備できたという事だろうか?他の仕事もしながら、この1本を時々考えてきた結果1年だったのか、で意味が全然違う。しかし、いずれにせよ、日本では考えられないほど時間とお金をもらってお仕事出来ているという環境があると思われる。うらやましい限り。(山縣コメント)

原題の「If Anything Happens I Love You」について

Netflix映画「If Anything Happens I Love You」

原題は「If Anything Happens I Love You」、直訳すると「何が起きたとしても愛してるよ」と思われがちですが、実際は「もし何か起きた時のために、先に愛してるって言っておくね」という意味が正しいみたい。
娘が最後に両親に送った文字だとすると、実は英語のままタイトルにして欲しかったと思ってしまう。その文字を越えては伝わらいからだ。その文字そのものに大切な痕跡があると思えてならない。

まとめ

今、一歳の娘を持つ自分にとって、このような映画体験は正直辛い。娘を失うなんて想像できないし、想像もしたくもない。だから、私たちは深く想像しないのだ。そして、当事者たちの痛みを置いてきぼりにしてしまう。しかし、事件の被害者も同じ気持ちだったのだ。そんな事が起きるとは誰も思っていない。つまり誰にでも起こり得るということ。それを思うと、この映画を体験することでまた、深く娘と関わり続けることを願ってやまない。

だからやはり、想像する力が人には必要なのだ。
この映画を観るべきか、と問わればそういう意味でも、Yes、と答えたい。

観終わって、しばらくぼーっとした後、娘をぎゅっとしたくなる。
どうか、このような事件が二度と起こらないようにと願う。

The reason why the 93rd Academy Award-winning short animation award-winning Netflix movie “If Anything Happens I Love You” is recommended

I’ve already watched the 93rd Academy Award-winning short animation award-winning Netflix movie “If Anything Happens” three times. This movie is a short animation of only 12 minutes in time. The power of the movie, which was put into that only 12 minutes, is squeezing my heart. When asked if I should watch this movie, I can say it clearly.

That’s Yes

The reason I would like to recommend it is that this movie is an area of salvation that the art expression of animated films has stepped into. In other words, this work focuses on the family of the victims of the shootings in elementary school, and despite the painful theme, it feels like the painful theme is softened by the animation without dialogue. Because it will let you.
First of all, I would like to describe what kind of person made it and what kind of background was America now.

Before watching “If Anything Happens I Love You”, what you need to know about mass shootings

Mass shootings have become a common occurrence in American society, where gun control does not go as planned. Of course, if there is a president who receives donations from a gun-related company, gun control will not proceed at all.
There is such data. In the three and a half months since 2021, there have been 147 mass shootings. Given that there were 85 cases during the same period in 2020, experts point out that it is highly likely that similar cases are increasing due to copycat crimes and mass shootings.

Spotlight on victims illuminated by “If Anything Happens I Love You”

The incident weathers over time. No matter how big a tragedy, when it doesn’t appear in the news or another big tragedy emerges, it fades from people’s memory. However, the families of the victims cannot be forgotten and must live their lives afterwards. Even if I try to forget it because I can’t face the reality, my life will continue even though I make an effort. From the eyes of others, it may be a place that is beyond imagination and is not spotted. It is a movie that shows the scene in the form of animation.

The existence of shadows that project the true intention is excellent

It can be seen from the table that the couple did not accept each other’s reality and did not talk about their daughter who never returned. However, the shadow speaks for himself. You can see them screaming and swearing at each other. The shadows change their movements freely and seem to be in conflict with each other, but in reality, it seems that only the shadows are really related to each other.
The shadow is the heart that was suppressed by not touching it so much that I avoided talking about my daughter. Because it reminds me of my daughter, it seems as if the shadows are moving as much as I have suppressed the time I have avoided interacting with each other.

The scene that gives me a glimpse of regret that I have to go to school at that time hurts my heart. Her true feelings cast a shadow over her daughter trying to stop her from going to school. But she can’t stop in the shadows of her memories.
However, rather than trying not to touch, not remember, or forget, the inside out that important memories and shared time will be a chance to regain the time to interact with each other is wonderful. She wants you to see the shape of the last shadow.

When she writes it in words like this, she might think, “Oh, that’s right, I understand,” but understanding and watching the video are completely different things. So by all means, I would recommend a 12-minute movie experience.

Summary

For me, who has a one-year-old daughter now, such a movie experience is honestly painful. I can’t imagine losing my daughter, and I don’t want to. That’s why we don’t imagine deeply. And it leaves behind the pain of the parties. However, the victims of the incident had the same feelings. No one expects that to happen. In other words, it can happen to anyone. With that in mind, I hope that by experiencing this movie, I will continue to be deeply involved with my daughter.
So, after all, people need the power to imagine.
When asked if I should watch this movie, I would like to answer Yes in that sense as well.

After watching it and vacant for a while, I want to make my daughter squeaky.
I hope that such an incident will never happen again.

About aritoo

アーティスト(俳優、脚本家、演出家、絵描き)として、感じたままを様々な媒体を通して放出。また芸能プロで演技講師に力を入れ、現在メソードアクティングを紐解きながら世界で通用する俳優を育成する。