米映画「フロリダ・プロジェクト」と日本映画「万引き家族」から観る世界 Part1


米映画「フロリダ・プロジェクト」と日本映画「万引き家族」から観る世界
米映画「フロリダ・プロジェクト」と日本映画「万引き家族」から観る世界

内容が濃すぎるため、Part1、2に分けて記事にします。
Part1は、米映画「フロリダ・プロジェクト」に、Part2では日本映画「万引き家族」の感想とまとめて、ちょっと比較したい。

米映画「フロリダ・プロジェクト」と日本映画「万引き家族」の共通テーマとは?

どちらも共通のテーマは“貧困”。

米映画「フロリダ・プロジェクト」は、第90回 アカデミー賞(2018年)助演男優賞にウィリアム・デフォーがノミネートされた2017年のショーン・ベイカー監督作品。
日本映画「万引き家族」は、もはや言わずと知れた、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞の2018年公開の是枝裕和監督作品。
同時期にどちらも日本公開で、同時期にAmazonプライムビデオ、Netflixでネット配信。ちょうど見比べやすいですね。テーマの“貧困”、ワーキングプア、それを救う制度が機能していないことをどこかで投げかけているのではないでしょうか?どちらも素晴らしい作品。

Both “The Florida project” and “shoplifters” are great movies.

Both “The Florida project” and “shoplifters” are great movies.
The theme of these two movies is “poverty”. It’s called working poor, and it’s because of a system that doesn’t get rich when you work or work at low wages. Isn’t it somewhere that the system that saves the people who are stuck in the dilemma is not working? Both are wonderful works.

「フロリダ・プロジェクト」「万引き家族」の大きな違い

・「フロリダ・プロジェクト」は、ドキュメンタリー映画のようにシーンを構築しテーマを浮き彫りにする。
・「万引き家族」は、映画というエンタテインメントによって物語化してシーンを構築しテーマを浮き彫りにする。

「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」 Amazon Prime

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法
フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法

あらすじ
家を失った6歳の少女ムーニー(ブルックリン・キンバリー・プリンス)と母親ヘイリー(ブリア・ヴィネイト)は、フロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートの近くにあるモーテル「マジック・キャッスル」で生活している。周囲の大人たちが日々の暮らしに苦しむ一方、ムーニーは子供たちと無邪気に遊び、管理人のボビー(ウィレム・デフォー)は彼らを見守っていた。ところがある出来事を機に、ムーニーの日常は一変し……。
※シネマトゥデイ参照

「フロリダ・プロジェクト」とは?

「フロリダ・プロジェクト」とは、60年代から始まった、ウォルト・ディズニーによるフロリダでのテーマパーク開発計画を指す言葉。
しかし一方でこの「プロジェクト」が意味するのは、低所得者のための公営住宅。この映画は、アメリカの中産階級の幸せの象徴であるあの巨大テーマパークの影で、多くの貧困者、つまり低所得者が暮らしているという事実を皮肉に描いています。ちなみに舞台となるモーテルは、フロリダ州に実在するマジック・キャッスル・イン・アンド・スイーツ。ここで泊まっているのは人たちは、観光客ではなくそこで居住する家族たちなのです。

ドキュメンタリー映画のようとは?

舞台となったマジック・キャッスルは実在のモーテル。しかも撮影当時も今も営業中だそうです。つまり、映画に随所に登場するモーテルの人たちは実際にそこで生活している人たち。子役のひとりもそのモーテルにずっと暮らしている1人。引きのショットでは、モーテルに住む人の姿がちらほら。作られた世界ではなく、そこにあるものをそのままシーンにしたかのようです。そんな姿を垣間見せながら、リアルな姿が見えてくるのです。もしかしたら、大きな事件が起きないように感じるかも知れません。実態と距離があまりに遠い世界の人ならば(笑)でも、大きな事件は起きているのです。きっと、それを目の当たりしたキャストたちの距離感や挫折感、あっけらかんさから受け取れるはず。
メインキャスト以外の一部以外は、素人だったり・・・なのです。凄いですよね?メインキャストの誰が素人なのか?

名優ウィリアム・デフォーについて

名優ウィリアム・デフォーが普通のおじさんを生きている。これは新しい感じがしました。この「フロリダ・プロジェクト」のモーテルのような暮らしがある事を本作に参加するまで知らなかったそうです。この名優が普通の貧困層のおっさん役を演じるという面白さ。癖のある役、問題作や話題作に出演を重ねてきたウィリアム・デフォーが本作に出演したというのは興味深い。実際モーテルで住んで役に備えたとか。この実情を背負いきれないけど、背負いきらずにでも、何とか生きてるおっさん像がリアルでいい。

ちなみに、初めてウィリアム・デフォーの演技を見たのは小学生の頃に父親と下関市の映画館で観た「プラトーン」。小学生でこの映画のチョイスも凄いですよね(笑)あれから40年近く経っても、映画の新作で出会えるなんて、そして素晴らしい作品に突進しているなんて。そんな個人的な感傷はさておき、日常の中にいる、その辺にいるかも知れない人として感じられた演技が素敵でした。

ウィリアム・デフォーのインタビュー

※ネタバレ 地味に好きなシーン

冷蔵庫を身内のジャックと運びながらエレベーターに積み込む時、「日曜にわざわざ遠くからきて、こんなバイトしたくない。誰か雇え。」とお金を返される。不平を言われ、渋い表情を浮かべるも「最後までやれ」と、とりあえず冷蔵庫を一緒にエレベーターでおろさせるシーン。
実は頼らざるを得ない、でももう厳しい人間関係が、ちょっと刺さる。

マジで頼むウィリアム・デフォー ©Arito Art
「フロリダ・プロジェクト」
マジで頼むウィリアム・デフォー ©Arito Art
「フロリダ・プロジェクト」

母役のブリア・ビネイト

母ヘイリー役のブリア・ビネイトはベイカー監督がInstagramでスカウト。そんなことってあるの?っていう信じられないキャスティング。リアリティを求める監督が、彼女から演技をしっかりと引き出していました。そして、それに女優として応えています。彼女の素晴らしい悪態の数々。つっぱるしかなかった、つっぱって生きるしかなかった姿。その裏の顔はほとんど出さないですが、いいんです。

ヘイリーとムーニー ©Arito Art
「フロリダ・プロジェクト」
ヘイリーとムーニー ©Arito Art
「フロリダ・プロジェクト」

Bria Vinaite, the role of mother Haley

Bria Vinaite, the role of mother Haley, was scouted by Baker on Instagram. Is there such a thing? That’s an incredible casting. The director who wanted reality was pulling her acting out of her firm. And she responds to it as an actress. Many of her wonderful curses. I felt that she had to justify herself by cursing herself, and that she had no choice but to live that way. I barely show her back face, but it’s good.

本当に素人さん?

彼女のインタビューからも分かる事ですが、彼女はインスタグラマーとしてTシャツやソックスなどのファッションを販売して活動。
監督がそれを見てコンタクトを取り、2日間のオーディションの末に抜擢。これまで演技はまったくやったことのない素人さん!驚きですよね?撮影の2週間前にフロリダ入りし、2週間に渡って、演技トレーニングを受ける。その時の先生が、サマンサ・クワン。彼女を飾らずに引き出す感情解放トレーニングなどあったのではないかと思われます。そして共演者となる子どもたちも別メニューで参加していたとか。ちゃんとトレーニングを受けて出演していて、しかもあんなにオープンに演じられたら、玄人もまいりますね。意外と予備知識や形芝居の教育を受けてこな方が素直に生きれるんです。

ブリア・ビネイトのインタビュー

子役のムーニー役ブルックリン・キンバリー・プリンスの脅威 ※ネタバレ注意

脅威の無邪気さっぷりは最高!最初驚きました、あまりにも無邪気にカメラの前で生きていて、「わぁお!」です。本当に素晴らしいんです。素晴らしいのですが、実は最後は泣こうとしていた・・・。
この最後のウソ泣きは妻でも見抜けてしまったほどの演技になりました。言ってしまうと、最後だけ演技しようとした、という感じです。監督のリクエストがうまくかみ合っていないか、もう時間的にゴリゴリと押していくしかなかったのか。それまで子ども目線の多かった映像だけに、まさにクライマックスで?って少しなってしまいました。音楽はその分全開に盛り上がってきました。
ここだけ、このシーンだけ、一番大事な繊細な部分だけ、段取り芝居(形芝居)で終わったのです・・・それまでが素晴らしい為、かなりショック!最後が素晴らしいアクティングであれば、助演女優賞にノミネートだったのではないでしょうか?でも、ほんと天真爛漫さは凄いです。

ブルックリン・キンバリー・プリンスのインタビュー

The threat of Brooklyn Kimberly Prince as a child Mooney

The innocence of the threat is the best! First surprised, she was so innocently alive in front of the camera, “Wow!” It’s really wonderful. It’s great, but in the end she was trying hard to cry…
This last crying lie was so good that even my wife could overlook it. In other words, she tried to act only at the end. Did the director’s request not mesh well, or could it just push with time? It was just a climax because it was a movie through out children’s eyes until then. It’s gone a little. The music was full of excitement.
Only here, only this scene, and the most important and delicate part ended up in a setup play (shaped play)…Because it is wonderful until then, it is quite a shock! If the last one was a wonderful act, I think it was nominated for the Supporting Actress Award. But the real innocence is amazing.

ゲリラ撮影あり ※ネタバレ注意

ちなみにラストのディズニーランドのパーク内の撮影は、スマホでゲリラ撮影したそうです。一瞬「あれ、ディズニーがこの映画の撮影を許したのか?お客さんの反応が普通なので、もしかしてゲリラ撮影なの?」って思ったらやはりそうでした。

まとめ ※ネタバレ注意

実は、ヘイリーの背景はほとんど語られていない。
若くして母になった彼女に対して、手を差し伸べる制度はなかったのか?またその知識や機会はちゃんと伝えられていないのか?ファミレスで働く友人の生活っぷりからも垣間見えるが、子ども一人抱えてるのに、仮住まいが本気住まいという状態でモーテルに居続けなければならない状況。
しかし、ヘイリーはうまくアルバイトも出来ない中、売春のためモーテルにお客を呼び込み、その間はマーニーをシャワー室で遊ばせるという過酷な選択。一生懸命家賃を払って、2人で生活しようと頑張っているだけ。そう、一生懸命生きてるだけ。結果だけを観たら、きっと彼女の生き方や言葉使いに共感は覚えないでしょう。

見かけは、その人がどう見せたいかの裏返し。
どうしてそう見せたかったのか?
いやそう見せて生きざるをえなかったのか?

その過程が無視され、結果だけに対応する社会制度のほころび、なのではないでしょうか?彼女たちが被害者であることを観ようとしないのであれば・・・

※「万引き家族」のことはPart2で。

本編予告編

Summary of the movie “The Florida Project”

In fact, Haley’s background is barely told.
Wasn’t there a system to reach out to her young mother? Also, is that knowledge or opportunity not properly conveyed? Although it is a glimpse of the life of friends who work at the family restaurant, they have one child, but they have to stay in the motel because of temporary housing.
However, while Haley couldn’t do that, he had to make the harsh choice of customarily attracting guests to the motel, while letting Marnie play in the shower. As a mother, she only pays hard rent and tries to live with two people. Yes, I’m just working hard. I’m sure I don’t sympathize with her way of life or language.

The appearance is the inside out of what that person wants to see.
Why did you want to show that?
Didn’t you have to live by showing that?

Isn’t that the process is neglected and the social system is the only one that responds to results?

About aritoo

アーティスト(俳優、脚本家、演出家、絵描き)として、感じたままを様々な媒体を通して放出。また芸能プロで演技講師に力を入れ、現在メソードアクティングを紐解きながら世界で通用する俳優を育成する。

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