かもめのジェシカシリーズ(4枚の作品)、再考!


ご存知ない方がほとんどだと思いますので、少しだけ「かもめのジェシカ」シリーズの絵を描いた経緯をお話します。 どの作品も、453×170㎜という特殊なサイズで描いたアクリルガッシュ画です。

2016年、ある作品を思い立ちました。
その時期は、東日本大震災後から丸5年が経つ頃でした。
久しぶりに読んだ「かもめのジョナサン」が、妙に引っ掛かりました。 五木寛之さんの訳でしたが、最後のページの訳者あとがきもまた、引っ掛かった自分の心をある種代弁していて、ほっとしたと同時に、時代の変化を感じたのです。

これはベストセラーで、多くの方が読んだ事あるかと思います。 まず、Wikiがシンプルにあらすじをまとめていますので、ご存知ない方がいらっしゃれば是非、一読後にblogも読んで頂けたらと思います。

かもめのジョナサン

かもめのジョナサンとは?あらすじ

第1部
主人公のカモメのジョナサン・リヴィングストンは、他のカモメたちが餌を摂るためにしか飛ばないのに対して、飛ぶという行為自体に価値を見出す。そして、どこまで低速で飛べるか試してみたり、どれほど低空を飛べるか試した。ジョナサンは、食事をするのも忘れて飛行の探究に打ち込んだために、「骨と羽根だけ」の状態になっていた。あきれて注意する母に、彼は、「自分が空でできることは何で、できないことは何かを知りたいのだ」と説明した。さらに、時速数百kmという高速で飛ぶことを探究するために、高高度から急降下する危険な練習を重ねた。だが、それらの奇行を見とがめられ変わり者扱いされ、ある日のこと、群れの「評議集会」に呼び出され、長老から”無責任”などと決めつけられ、カモメはただ餌を食べ可能な限り長生きするために生まれてきたのだ、などと言われる。そこで、ジョナサンは、生きることの意味やより高い目的を発見するカモメこそ責任感があるのだ、と群れのカモメたちに考えを伝えようとするのだが、理解されず群れ社会から追放されてしまう。追放されて一羽になっても速く飛ぶための訓練をやめないジョナサンの前に、2羽の光り輝くカモメが現れ、より高次なる世界へと導いて行く。
Wiki参照

かもめのジョナサンっぽさ ©Arito Art
かもめのジョナサンっぽさ ©Arito Art

第2部以降
「目覚めたカモメたち」の世界でジョナサンは、より高度な飛行術を身に付けたすえ、長老チャンから「瞬間移動」を伝授されることになる。そしてある日、弟子を連れて下界に降り、カモメの人生は飛ぶことにあるという「思想」を下界のカモメに広めようと試みるが、下界のカモメからは悪魔と恐れられるようになるなどトリックスターの側面を醸し出していく。 そしてある時ジョナサンは自由を求めて弟子たちからも離れ、それから数年の歳月が流れた。若いカモメたちの間ではジョナサンは「伝説のカモメ」として神格化され、ジョナサンの言葉、仕草、目は何色だったかなど、些細なことを知りたがり崇めるようになるが、一方で直接ジョナサンから学んだ弟子たちは、そのようなことに夢中になってジョナサンの教えの神髄たる「真に飛ぶことを求める」訓練や努力をおろそかにする若いカモメたちに懐疑的になる。そしてジョナサンの弟子たちもいなくなると全ては形骸化した儀式化し、儀式とその解釈に多くの時間を費やすようになり、飛行技術の追求は完全に忘れ去られていく。若いカモメのアンソニーはそんな風潮に対して「あの偉大なジョナサンはずっと昔にだれかがでっちあげた神話にすぎない」と嘆く。
Wiki参照

「十四才」ハイロウズ

そして、大好きなハイロウズ。
ザ・ブルーハーツからのファンで、ハイロウズでも大好きな自分にとって、この「十四才」は名曲の中に入っています。初めて聴いた時、アオイ心にゾクっとして涙すら流した曲なんです。そのモチーフになっているのが、「かもめのジョナサン」だったのです。
ご存知ない方は、是非聞いて欲しい曲です。
挑戦し続ける事、そして、子ども心がいつでもそうさせてくれるぜ、そんなメッセージで受取っていました。

「十四才」ザ・ハイロウズ

あの日の僕のレコードプレーヤーは
少しだけいばってこう言ったんだ
いつでもどんな時でもスイッチを入れろよ
そん時は必ずおまえ十四才にしてやるぜ
十四才 歌詞より抜粋

リアルよりリアリティ、これは自分にとってのリアリティがとても大切だし、上記歌詞は天真爛漫さというか俳優にとってもとても大切なモノだったのです。俳優以外でもそうだと思いますが、今もって熱い歌詞と歌に胸が熱くなります。そんなこともあって、そんなポジティブな「かもめのジョナサン」をずっと胸に思っていました。
でも、本は違っていたというギャップに妙な気持ちが芽生えました。

かもめのジョナサン、再考

しかし、あらすじを読んでも感じたかも知れませんが・・・完全に男目線のロマンのようなニュアンスが作品の匂いが感じられました。嫌いではないですが、ただ、ちょっと一般の人を見下しているような、そんな感覚を覚えるのです。
私自身、10代後半から20代はジョナサンと同じように思っていました。例えば下記のような気持ちです。

サラリーマンになんてなりたくない、あんな風に自分の意志を持たないような人間になりたくないし、バカみたいに満員電車にのって機械みたいに働く人間にはなりたくない、自分は人とは違うんだ。自分のビジョンが何よりも凄くて、自分がいかにすごい事をしているか演技や脚本や演出を見れば分かるだろう? だから自分の活動は何よりも優先される(言い過ぎ(笑))
一般の人とは違うんだ。
とても大切な事を自分の意志でやっているんだ。
 ※・・・若干大げさ表現しております

やってらんねぇぜ・・・Byジョナサン ©Arito Art
やってらんねぇぜ・・・Byジョナサン ©Arito Art

と・・・。
毎日あくせく食うために働く一般市民を見下し、ある種の男のロマンを求めた生き方。 男という性別優位な目線も見え隠れ、なのです。恥ずかしい話、いつの間にかそんな自分を特別視しすぎた目線を持ったりしていました。サラリーマンを一括りにして、ちゃんと見たこともなかったのです。ちょっと天才なんて言われたりして、バカみたいにそれ信じちゃって(笑)

男のロマンは女の不満、は古い(笑)

多分、男のロマンに浸りやすかった時代だったかもですね。今や世界スタンダードでジェンダー関係なく、当然挑戦していいし優位はないですよね。

特に20代なんて、好きな事をやっていればいい、なんて思っていました。 しかし、何かに夢中になる時、世の中がどうなっているなんて知り得なくなるし、下手したら隣の銃声も聴こえなくなるくらい・・・。そうすると本当に世界に対して無関心になるのです。
これは、夢を目指したり、何かに夢中になると起こり得る現象というか、政治にも無関心になりやすい。気が付けば人権が消えているなんて事も起こりそうなほど怖い事なのです。まわりの夢を目指した人や、アーティスト、学生、また毎日あくせく働く方々があまりに政治に関して無関心な事に驚きました。

だからジョナサンの生き方も、一般の人の生き方も(※一般とは広くて定義できないですが・・・ざっくりと一般的にという意味で)どっちも何かに精一杯で余裕のない実態は怖い事だなと気が付きました。
それは東日本大震災後に、あまりに我々の無知が大きな人災を生んでいるのをまざまざと見せつけられたからでした。それは友人の主婦やサラリーマン、映画人も演劇人も等しく無知と無関心の中にいて、ショックを受けました。でも、それは責める事ではなく、話をすると無関心である理由や、情報の提供側の問題など様々あるのです。
そっと、この言葉を添えておきます。

最大の悲劇は、悪人の圧制や残酷さではなく、善人の沈黙である。

The ultimate tragedy is not the oppression and cruelty by the bad people but the silence over that by the good people.

By Martin Luther King, Jr.( マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)

※キング牧師名言より

そして、かもめのジェシカは生まれました

ジョナサン=男性、ジェシカ=女性
伝説のジョナサンは登場させないで、ジェシカの目線で物語を簡易的に作りました。 実は物語と絵とどっちが先か分からない感じもあります。
先に絵のイメージをして、もう描き始めながら物語を埋めていく作業だった記憶があります。とても人気のある作品となりました。 個展を開いた際に、そのうち2作品の原画が旅立ちました。また、その際に作った栞も人気でアッという間に売り切れたのです。 久しぶりに作品を整理していたら、画像が出てきましたので、震災から9年目を迎えるにあたり、このblogにも記しておきたいと思いました。 また、10年目、そして20年目と、残っていけば幸いです。

かもめのジェシカの栞
かもめのジェシカの栞

かもめのジェシカ 「急降下」

かもめのジェシカ 急下降
かもめのジェシカ 急下降

 ジョニーというかもめは、まわりとは違う凄いことをしたいと思っていました。他のかもめよりも早く飛ぶための練習を毎日していたのです。なぜなら、伝説のかもめのジョナサンにあこがれていたからです。そこへジェシカが飛んできて、ジョニーに話しかけました。

ジェシカ「ジョニー、あなた、かもめのジョナサンにあこがれてるの?」
ジョニー「彼はレジェンドさ。だって、他の奴が思いつかないくらいのスピードに挑戦して しかも瞬間移動もやり遂げて、次世代い伝えたのさ!」
ジェシカ「そんなにスピードが大事なの?」
ジョニー「男の中の男さ、たぶん挑戦する気持ちとか女には分からないよ。」
ジェシカ「ジョニー、古いわよ、男のロマン?笑わせないで。まわりをご覧なさい、たくさんの女が普通に活躍してるじゃない。」
ジョニー「でもね、何も分かっちゃいないのさ。」
ジェシカ「自分を越える挑戦をしてるのは、男だけと思わないでね!私、急降下してジョナサンの時速200キロを超えてみせるわ!」
ジョニー「ええ!」

 そして、ジェシカは一気に上昇したかと思うと、 一気に急降下していきましたとさ。それは、ジョニーが到達できなかったほどのスピードと勇気が必要なことでした。

かもめのジェシカ 「背面浪漫飛行」

かもめのジェシカ 背面浪漫飛行
かもめのジェシカ 背面浪漫飛行

 時速240キロを越えたジェシカの急降下に、ジョニーが驚きました。
 
ジョニー「凄い、凄いよ、ジェシカ!」
ジェシカ「そう?」
ジョニー「うん、他のかもめと全然違うね!」
ジェシカ「違わないのよ、そんなに。」
ジョニー「普通の奴らはさ、自分の壁を越える凄さなんて分からないんだよ。」
ジェシカ「普通のかもめには分からないって、どうして分かるの?」
ジョニー「まわりが理解してくれないから、ジョナサンは追放されたんだ。みんなはエサを食べることに必死で、何も考えてないんだ。」
ジェシカ「そう思ってるは、ジョナサンなの?あなたなの?」
ジョニー「え?」
ジェシカ「分からないって決めつける前に、教えてよ、どう思っているのか。」
ジョニー「教える?」
ジェシカ「普通のかもめの中にも、あなたの気持ちに共感するかもめがいると思うわ。それは伝えないと分からない。ねぇ何がしたい?」
ジョニー「普通とは違うこと。」
ジェシカ「それは何?教えてよ。」
ジョニー「僕の事を特別って思って欲しいんだ。」
ジェシカ「だったらいるじゃない、あなたの目の前に!」

 するとジェシカは水面に背中を向けて飛びます。

ジェシカ「背面飛行もできちゃうわ~、ヒャッフォ~♪」
ジョニー「ジェシカ~~~!待ってよ~、僕は水平飛行だ~~♪」

 夕日を浴びて、2羽のかもめは輝きましたとさ。

かもめのジェシカ 「一羽一羽」

かもめのジェシカ 一羽一羽
かもめのジェシカ 一羽一羽

ジェシカは言いました。

ジェシカ「ジョニー、食べるために必死な一般のかもめと、自分の限界を超えることに努力することに夢中なあなたと、何が違うの?それぞれが自分の身の回りのことにばかり夢中で必死になるのと、何がどう違うの?」

 ジョニーは嫌な気持ちになりました。なぜなら、普通のかもめと一緒にするなよ、と思ったからです。それを悟ってジェシカは言います。
 
ジェシカ「ジョニー、どんなにバカにしたって、あなたもそのかもめ達の中の一羽なのよ。一羽一羽違うし、その世界に耳を傾けて、私たちで本当に凄い事しない?」
 
 ジェシカはそう言うとジョニーのまわりをくるっと飛びました。しばらくして、ジョニーは群衆の中へと向かっていきました。

かもめのジェシカ 「明るい方へ」

かもめのジェシカ 明るい方へ
かもめのジェシカ 明るい方へ

ジョニーは、普通のかもめたちは、一羽一羽の集まりだと知りました。自分のその中の一羽だという事に気が付いたのです。
そして、また天高く飛び上がり、くるっと舞いました。
ジェシカも、それを追いかけて飛びました。
 
  明るい方へ
光のある方へ

という4枚からなる作品でした。

実は追加作品が1枚あります

このジェシカシリーズは嬉しい事に絵の雰囲気やワイド画角もとても好評でした。この4作品から2ヵ月ほどしてからですが、追加でさらに1枚を描いたのです。こちらはあまり知られていないかもですね。 栞にもなっておらず、個展にも展示しておりません。一度描いて、しかもあまり公にしなかったのですが、ちょっと出してみますね。

かもめのジェシカ 「夜明け」

かもめのジェシカ 夜明け
かもめのジェシカ 夜明け

『確か伝説の「かもめのジョナサン」は暗闇を飛んでいたんだ。他のかもめがしない事をしたんだよ。』
ジョニーはそんな事を思って夜明けを見つめていた。暗闇で見えなかった前方がどんどん開けていくような気がしました。
    
ジョニー「前が見えない時は、見えるまで待つのもいいね。それまでの時間は、体を休ませたり、想ったり、考えたり、勉強したり・・・」
ジェシカ「時には愛し合う時間に必要でしょ」

 そう言って、ジェシカはジョニーの隣に寄り添いました。

まとめ

絵は、文字で伝えるのではなく絵だけで伝えたい。
そんな気持ちもありますが、文字と合わせてみるとまたイマジネーションが動いたり、違うインスピレーションが沸くなんて事があります。
絵が先か、文章が先か。
これ、ちょっともう曖昧なんです。
絵の後に勝手に文章を書いてしまったのもありますが、とにかく「かもめのジョナサン」の古めかしさを払拭したい気持ちが突然沸いて沸いて、描き始めました。自分に起きたインスピレーションからいくとそうなってしまうのです。だから蛇足な文章なのかも知れません(笑)脚本のように会話形式だった最初の部分も頭の中で会話しながら絵を描いたいた気分で、後で文字起こしした感覚だったと思います。

4作品は、5回目の3月11日が近づく中で制作していきました。
対話なき日本の政策のなか、科学的な事実も風評として扱われたり、一般の方々同士がなぜがいがみ合う事が見えてきていました。無かったことにするような言葉や行動が溢れ、それを批判したり、真実を求めると悪者扱いされるジャーナリストが見えてきました。あげく、特定秘密保護法が施行されてしまったり、どんどん真実が見えなくなる心配が出て来た最中だったと思います。
残念ながら、今はもっとひどくなっていると思います。

2020年3月1日現在、新型コロナウィルスで日本の対策の遅れ、世界の動き、専門家の声、様々聴こえてきます。聴くべき人から声を聴いていないような、一方的な会見、質問は受け付けない姿勢、後手後手のアクション、説明不足などなど。
批判したら限がないですが、自己責任を越えたアクションを国民は求めているし、ちゃんとした情報や質問に答えない姿勢がパニックを生み始めています。
トイレットペーパーの売り切れが昨日起きて驚いています・・・。
なのに、どこかで「かもめのジョナサン」ごとく上目線な公僕の活動が観れて仕方ありません。

それでも、声を挙げることで・・・
明るい方へ
行くことを願っております。

3年後に読み直したら、こんなバカな事があったなぁなんて言えるblogになれば嬉しいですね。

About aritoo

アーティスト(俳優、脚本家、演出家、絵描き)として、感じたままを様々な媒体を通して放出。また芸能プロで演技講師に力を入れ、現在メソードアクティングを紐解きながら世界で通用する俳優を育成する。