可でもあり否でもあります。当然ながら、演出家や指導者によって色々と工夫があったりすると思います。
そんななか、ちょっと2回だけワークショップをZOOMでやってみて感じたこと。またスタジオで実際にやってみた小さな経験から考えてみました。はっきりと言い切るには経験としての情報は少ないので、あしからず。
では、なぜ記述するかというと、新型コロナウィルスの第2波、第3波に備えて自粛内での活動で今後の参考になればと思いたった次第です。ちなみに、自粛中では不要不急の対象外ということで、スタジオで実はワークショップしている事務所やスクールがありました。スタジオの場合はその都度、窓を全開にオープンにして、マスク着用、相手にはノータッチ(触れない)というルールでできる範囲でやってきました。

目次
演技ワークショップで何をやるのかでZOOMの活用方法が違う
その通りです。ざっくり2つに分けてみます。
①脚本を使用して、シーンを探求していくことや、実際にシーンを演じて体験してみること。②基礎トレーニングや、シアターゲームなどで軽くアップすること。今回の検証としては、①で準備してきた為、①について大きく検証してみました。
ZOOMで演技ワークショップのメリットは?
・顔を見ながら本読み程度の会話は可能
・情報交換としての会話ができる
・シーンについての議論や、役など考察する必要があることを口頭で直接リクエストできる、場合によりその場で対応できる
・上記の情報の共有が出演者一同と可能
・ひとり芝居には比較的いいかも知れない
よりメリットを生かすには
シーンの背景(景色)を個人的に相手の為に工夫できると良い。スマホ端末の機能にもよるかも知れませんが、背景を変更する機能がある人は是非活用を。
画面に映っている範囲は決まっています。その範囲(アクティングスペース)を俳優が確認して、フレームから外れても出入りが素早く出来る空間作りをする必要があります。脚本でシーンを生きるのであれば、シーンの中には必ず場所が存在しています。広く想像しやすい色合いや場所の画像を使用し、お互いのリアリティを刺激し合うことが有効だと思います。
また衣装や小道具があればお互いにとってもとても大切な準備と言えます。よりリアルにシーンを信じるために。

山縣WS
映りこむ背景の重要性
風景画像がうまく調整できない場合は、殺風景ながら同一色の背景、たとえばグリーンなどの色で統一して全体が使用するといいかも知れません(ZOOM画面の中で可能です)。きっとブルーバックで演技をすることがあるかも知れませんし、自身で場所のイマジネーションをする訓練にもなると思います。
背景に自分の家の本棚や生活感が感じられすぎると、その場所(設定が家の中など)以外のシーンであれば、相手にとって余分な情報となってしまうからです。また、ある程度カメラの角度・アングルを調整する方がいいと思います。
ただし、本読みだけ、あるは朗読で音(声)の情報とエネルギーの受渡しであれば、問題ないかも知れません。

メリット、デメリット
山縣WS
ZOOMで演技ワークショップのデメリットは?
・本当の意味での演技での会話は難しい(本気の対話)
・音が少し遅れて届く(それぞれの端末やWiFi環境による可能性もあります)ため、オンタイムでのリアルなやり取りが難しい。
・画面が狭いため、大きく動くActing(演技)は難しい
・相手を観たくても、四角いフレームが並んだ中で相手を発見しなければならない場合がある(すぐに相手を観れない場合がある)
・スマホの場合、表示される画面が少ない場合がある(4人芝居ができないこともあります)
・基本的には自宅であまり大きな声は出せない(都会の住宅は特に)
・照明の問題(顔が暗い人がでる)
脚本の内容にもよりますが・・・
今回のクラスでは13分程度の4人芝居の脚本に挑戦しました。
しかも自粛で、ワークショップが中止になることは想定しておらず、またクラスでしている俳優トレーニングを生かすべく用意している脚本の為、三密避けられぬシーンの連続となってしまっていました。相手役に触れるし、接近しまくりです・・・。もっと少人数か密室でのワンシチュエーションであればさらに有効だと思いました。
今回の脚本で参考にしたのは「ファントム・ピークス」という北村一光さんの小説です。そこからインスピレーションを得て、長野県安曇野を舞台に、山に潜んでいる何かに襲われた人たちのギリギリの瞬間を13分にわたり繰り広げた短編を脚本にしました。ハラハラドキドキ・・・。
ZOOMワークショップで俳優にリクエストした内容
・その役が向かうべき目的の確認
・そして体験する演技をする為のツール(詳細は秘密ですが)
・衣装・小道具の用意
もちろん、事前の心体のアップや、台詞をスラスラと言えることは大前提にしております。画面から観て「準備していたなぁ」と思えたのは、血の付いたTシャツを身にまとった俳優がいたり、登山用品を用意している俳優がいたからです。キャスト2名はケガをしている設定の為、そのケガを体験できるツールを伝え実際に体験しながらカメラの前で演技。熱いですよね。
そしてシーンをスタートする前に、そのシーンの直前に体験したことを体を使って体験してからスタートしました。事前に俳優が準備できることは多いにあります。それが何かを知っておくことや事前にリクエストできるかが大切だと思います。そのような準備があってこそ、ZOOMでも画面から相手を観る事で少しだけでもリアルに受け止めれるモノが生まれると思います。
ただし、今回はメソードアクティング(体験する演技)をしたいという欲求がある俳優と、演出家との信頼関係がないことにはやはりリクエストはできなかったかも知れません。初対面で事前の準備なしの状態では厳しいと感じます。本読みくらいは可能ですが、それはまた別のことができそうです。

背景を統一した場合
山縣WS
ZOOM版「12人の優しい日本人」を観て
GW中に配信した三谷幸喜さん脚本「12人の優しい日本人」はご覧になりましたか?この作品は舞台から映画にもなった有名な作品です。舞台でも出演されいた俳優さんたちと合わせて総勢12人の俳優が共演した熱い配信でした。これをご覧になった方もたくさんいるのではないでしょうか?
近藤芳正さんが最初にコメントしていましたが、「稽古するにも全員がZOOMに入るだけで1日が終わり、全員が揃って稽古できたのも1時間くらいしかない」といった大変なスマホ音痴・ZOOM音痴の状態で始めている状況のようでした。
ですので、上記で山縣がリクエストしている背景・衣装についてはまったく構っていられないのが実情だったと思います。また、無料配信ですので、そこまでリクエストすることではないのかも知れません。もしかしたら、衣装としてそれぞれ着ていたけども衣装が役のものと思えなかったのかも知れません。
しかし、面白いことにゲスト出演した三谷幸喜さんは、出前を持ってくる役で衣装を着て登場し、出たがりな面白さもありますが、衣装が生きたのを垣間見れました。その瞬間に面白さが、ぐんっと上がったと思います。小道具も然りです。近藤芳正さんがバナナジュースをちゃんと用意してたのが面白かったです。
あともう一点ですが、ワンシチュエーション物でもありますので、陪審員審議室の部屋のカラーだけでも統一されたりすると、お客様がさらなる空間イメージを共有し易かったかも知れません。とは言え、やはりギリギリの状況で急きょ集まった素晴らしい俳優たちの挑戦は素敵でした。
まとめ
演技には基本的に対話が必須です。演技は基本的に相手ありき、なのです。当然ながら感応すること(相手から受け取ること)が大切で、画面という冷たく2次元的な小さいフレームの中の人とやり取りするのは既にハードルが高いと言えます。実は仕上げとして、スタジオで実際に今回の脚本で13分通して演技してみました。難しかったです。ZOOMでの中を通してのリクエストは俳優にかなりの想像力が必要なのを実感しています。そして、顔をみて、体温でリクエストしていくことは大切だな、と改めて思いました。
メリットもデメリットも内包しながら、それを受け容れ、その中でレッスンの目的や狙いを大事にしつつ、出来る範囲のことをしていくこと、これに尽きます。また今後さらに模索していくことが必要だと思います。また、ZOOM用の脚本を作って遊んでみることもいいですね。例えば、宇宙衛星で繋がった画面をお互い見合っているような設定や、誰かの部屋を覗いていて一方はそれに気が付いてないけど覗き合っている変態同士が画面で鉢合わせ(笑)など。。。
今回は脚本を使用した演技ワークショップでしたが、もしかしたら、初対面で集まった人たちでも、ちょっとしたシアターゲームのような事が可能かも知れません。まだまだ、否定するには早いツール。もっともっと未来はヴァーチャルになる可能性も多いにあります。模索していきたいと思っています。
最後までご覧いただきありがとうございました。