ベルナール・ビュフェ回願展 私が生きた時代 Bunkamuraザ・ミュージアム


11/21~1/24の短い期間ですが、Bunkamuraザ・ミュージアムで「ベルナール・ビュフェ回願展 私が生きた時代」が開催されています。久しぶりに美術館。やはりいいですね、美術館は。Bunkamuraザ・ミュージアムは比較的に狭いですが、それでもちょっと大きな洞窟の中を通っていくような、でも尊厳のある雰囲気が好きな美術館。

今回は、ずっと観たいと思っていた、ベルナール・ビュフェの回願展。とは言え、私がビュフェの作品の原画を目の当たりにしたのは割と最近なのです。知ることに遅いということはないのはもちろんですが、原画から受ける影響は計り知れず、出会った作品との胸のざわめきは心に残りますね。

ベルナール・ビュフェ回願展 私が生きた時代 Bunkamuraザ・ミュージアム
ポスター「ピエロ版」
ベルナール・ビュフェ回願展 私が生きた時代 Bunkamuraザ・ミュージアム
ポスター「ピエロ版」

原画ビュフェとの出会い 2016年「ポンピドゥセンター傑作展 1906-−1977」

2016年、「ポンピドゥセンター傑作展 1906-−1977」(東京都美術館)に行った際に、ビュフェの作品がありました。その企画展は、各年代にひとりずつアーティストの作品を紹介していて、ビュフェは1950年のアーティストとして紹介されていました。私はビュフェのそのシンプルさと、でかでかと大きなキャンバスに描かれた作品に釘付けになったのです。
それは黄色い部屋の中のストーブと椅子を描いた一枚の作品「室内」、画面の大きさ、絵のシンプルさ、キャンバスのザラついた表現に圧倒されたのです。

「ポンピドゥセンター傑作展 1906-−1977」図録から、ビュフェのページをパシャリ
画像だと伝わらない・・・
ポンピドゥセンター傑作展 1906-−1977」図録から、ビュフェのページをパシャリ
右の作品「室内」
画像だと伝わらない・・・

ビュフェとアナベル

遡ること2013年、ある本を買っていました。それが、「ビュフェとアナベル」というベルナール・ビュフェ美術館発行の本だったのです。ビュフェと妻のアナベルとの出会いと作品への影響を中心に描かれたハードカバー本。私は妻のアナベルを描いた作品に魅了されての購入。しかし、本物をまだ観たことがなかったのです。2016年に、「ポンピドゥセンター傑作展 1906-−1977」で出会うまで、原画と出会っていなかったのでした。
この本を購入して、ビュフェの妻となったアナベルとの「重要な他者」という関係性、妻のアナベルを描いた作品の数々を観てさらに虜になったのですが、上記記述した作品「室内」はまた違った圧倒感がありました。

ちなみに、その時に本に同梱されていたポストカードが、それまでビュフェに思い描いていた作品とまた違っていてもっともっと他の作品も観たいと焦がれていました。ですので、今回の展示はまさに願っていたモノでした。

「ビュフェとアナベル」に同梱されていたポストカード
今回の展示で、本物を観ることができました。
「ビュフェとアナベル」に同梱されていたポストカード
今回の展示で、本物を観ることができました。

アナベルとビュフェの共通点

幼い頃の、家庭内の不和と、母との死別。戦争でパリを占拠していたドイツ軍を目の当たりにしてきた思春期の2人。明るい未来を思い描く以前に、感じてきた辛さや悲しみ、愛情の喪失。結婚など考えていなかったような2人が、出会いをきっかけに一気に惹かれていく様子が、「ビュフェとアナベル」から伺え知ることができます。モデルや歌手として活躍していたアナベルは、両性具有的な魅力があったといいます。片やビュフェは、10代にしてその個性的な作品で成功を収めてから、社交的とは言えない生活の中で、求めていた安堵感や愛情を見つけたのだと思います。

ベルナール・ビュフェの肖像
©Arito Art
ベルナール・ビュフェの肖像
©Arito Art

マネージャーのベルジェとの別れ

社交力で文学や芸術の世界で幅広い人脈を築いてきた敏腕なマネージャーのピエール・ベルジェは、ビュフェの新たなミューズ、アナベルの登場により、ビュフェのもとを去ります。その後、ベルジェはイヴ・サンローランと組んでクリスチャン・ディオールの後継者となり、イヴ・サンローランを大きく成長させた凄い方なのです。かなりのやり手、商才のある方。社交的なことや絵の販売から個展の契約までその商才が、ビュフェをさらに大きな成功へ導いたに違いありません。それ故に、商売としての仲間であったと思いますが、ビュフェが求めていた「重要な他者」つまり、心を対等に通わせる相手には成りえなかったのではないでしょうか。

アナベルの肖像
©Arito Art
アナベルの肖像
©Arito Art

「ベルナール・ビュフェ回願展 私が生きた時代」のAritoArtからの勝手な見どころ案内

※こちらの「20世紀のモダンギャラリー」もぜひ参照してみて下さい

見どころ1 作品の大きさ!

今回の展示で、大きな作品がたくさん観れます。画集やポストカードでは全然届かないレベルの画力の破壊力が目の前にあります。しかも、東京の渋谷という街中の美術館で観れるのですから、ぜひ目に焼き付けて欲しい作品たちです。

見どころ2 ビュフェのサイン

画面に描かれたサイン。
こんな場所に書くの!?みたいな。。。画面のセンターライン横だったり、上だったり。しかも、トゲトゲしいサイン。少しずつトゲトゲしさが変化しつつも、新しいフォントを生み出したような感じなんです。メガデス!みたいな。
そのサインも含め、作品を楽しんで欲しいところです。手描きがいいですよね、サインって。近年は日本の印鑑のようなタイプを押してサインとする作品も多くなっていますが、個人的にはその一点にしかない手描きサインが好きなんです。ですので、自分の作品にはそこはこだわっているところ(今のところですが)。

「ベルナール・ビュフェ回願展 私が生きた時代」
ポスター参照
「ベルナール・ビュフェ回願展 私が生きた時代」
ポスター参照

見どころ3 傷・風景

その個性は人物の細長さに限らず、画面上のエネルギーの発散箇所。シンプルさがありますが、何度のその線を描き殴ったのでしょうか?というポイントがあったり、中盤の絵の変化、そして人を排除した風景画。風景画は人が不在、且つ天気が悪い(笑)という景色。鋭く伸びる直線に、潔さも感じられるし、怖さや痛みが感じられるのです。

見どころ4 最後の作品

1999年10月、頭に袋を被って自殺をしたビュフェ。パーキソン病を患い、手がうまく動かず、描けなくなっていく中で、最後の個展で展示した作品群が骸骨の人物たち。

まさに最晩年のビュフェの姿です

まとめ

「ベルナール・ビュフェ回願展 私が生きた時代」
ポスター「アナベルバージョン」
「ベルナール・ビュフェ回願展 私が生きた時代」
ポスター「アナベルバージョン」

ベルナール・ビュフェ美術館の「ベルナール・ビュフェ 1945-1999」の画集を購入してしまいまいた。本屋で観ては、価格2800円にちょっと躊躇していたのに、回願展を観たあとは、もう簡単に購入に踏み切った次第です。興奮がまだこの記事を書きながらも残っているぐらいですので、もう買っちゃいますよね(笑)版画も素晴らしいし、日本をモチーフにした作品もあります。
気持ちがざわめくアート、その中にも美しいと感じるモノがあり、それだけでもない。以前フランシス・ベーコンから感じた、内面から放出されたエネルギーを受け取ってしまうのです。

ベルナール・ビュフェ美術館には約2000点のビュフェ作品を所蔵しているそうです。1人のアーティストに対して、私設美術館に2000点ですよ!ある意味奇跡!必ずや行きたいと思っています。

ベルナール・ビュフェ美術館の「ベルナール・ビュフェ 1945-1999

About ひころーる

イラストレーター ひころーる 2011年に「めぐりのおと」の絵本を描いてから 個展を5回開催し、どれも好評を得て 調子に乗って、受注販売をしたり イラストレーターのお仕事をいただいたり 非常に恵まれてきた環境です。 美大も美術系専門学校もでていない私が イラストや絵を描き続けられる環境にあることに 感謝しながら、コロコロと状況を お伝えしていきたいと思います。 ※活動が多岐に渡って経験を備えてきました。 それぞれ専門のブログやウェブサイトがありますので、 こちらはイラストレーターに寄せたものにしていきます。