Netflixの韓国ドラマ「イカゲーム」にみる非現実とリアリティの狭間が面白い


既にNetflixのストリーミングサービスで日本国内でもTOP10内に入っている人気作。いや国内にとどまらず全世界で凄いことになっている。Yahoo!ニュースによれば、Netflixは「イカゲーム」に日本円にして約24億円投資し、約1,019億円の収入をあげる見通しであるとブルームバーグ通信が伝えたとのこと。この金銭感覚についていけないですが、そうらしいですね。
以前、某映画のプロデューサーが、予算が数億の映画でも「安い安い」ってお酒の席で言っていたのを思い出したが、それ以上の金額で当然世界は動いているのを実感します・・・。ホントに日本って「安い安い」で制作してるんですねって💦
さて、このドラマ。私はこんなにも話題になっていると知らず、トレーラーから、ちょっと「20世紀少年」のようなワクワクなレトロ感があって、そのビジュアルにやられました。〇△□の仮面、赤い服、そしてゲーム参加者たちの体操服のジャージの昭和感。40代以降の世代は、このニオイにちょっと気持ちが引っ張られてしまうのでないだろうか。ビジュアルが既に勝っている、言ってしまえばその取っ掛かりで一気見した次第です。全9話というミニシリーズですのでとっつきやすく観易いのも魅力。
ちなみに私は、映画「SAW」の最初の映画(シリーズで言うところの「1」です)を思い出しました。
※以下、ほとんどネタバレ含みます

あらすじ

「イカゲーム」予告編

ある日謎のゲームへの招待状が、金に困っている崖っぷちな人々の元に届きます。年齢・職業もバラバラな456人の参加者は、悲惨な現状から抜け出すべく、賞金456億ウォンを目指し、子供の頃に遊んだゲームを想起させる“命懸けのサバイバルゲーム”に挑むことに……。謎の人物が統べる、全てが不可解な空間の中で、“だるまさんがころんだ”などを思わせるゲームに挑戦する参加者の姿が描きだされるが、子供時代に遊んだゲームと違うのは、敗者には容赦ない死が待っていること。果たして勝ち残るのは誰か、そしてこのゲームに隠された目的とは?
映画『トガニ 幼き瞳の告発』などのファン・ドンヒョク監督作。『新しき世界』「神と共に」シリーズなどのイ・ジョンジェ、『刑務所のルールブック/賢い監房生活(原題)』などのパク・ヘス、本作が女優デビュー作品となったモデルのチョン・ホヨン、その他豪華なカメオ出演も話題となっている。

FILMMAGA

「イカゲーム」での命の扱いについて

「イカゲーム」1話
「イカゲーム」1話

命の扱い、これって子どもを持つ親となった今、気になってしまいます。無邪気な子どもの遊びがデスゲームとなり、敗者は簡単に命を落とすという怖さ。子どもの遊びと対極にある殺人が、さらっと行使される怖さがある。これを面白さと言っていいのかは、何とも言えない。正直、ゲーム感覚で命が消えていくシーンは「こんなの作っていいのか?」と倫理的に思えてならなかったのは事実。

なぜなら、参加する人物たちの描写にリアリティがあったため、「名探偵コナンで命を落とすようなリアリティの無さ」が無いのです。かと言ってスピルバーグ監督の映画「プライベートライアン」の冒頭20分のような命の消え方と同等のリアリティでもない怖さなのです。「イカゲーム」は「プライベートライアン」のように戦争で落とす命ではなく、飽くまで遊びで落とす命だからこその心地悪さと怖さがあることを指摘しておきます。やはりそこはR指定とさせていただきたい作品に違いありません。

演技について

001 オ・イルナム役のオ・ヨンス

「ちょっといちゃもんつけるなよ、凄いヒットしてんだからさぁ」「みんな最高じゃないか」って思うかも知れませんが、敢えて演技について触れておきたいと思います。その点を指摘することが私がblogを書く意味となると思っているからです。ちなみに、イ・ビョンホンが登場した際には「お!」とシーンが締まりました。やはり存在感がありました。ちなみに、この画像の001の爺さんですが、俳優として時々嘘くささとうか相手との対話で持たなくなった時間が前半はちょこちょこ画面アップで出ますが、中盤以降は役としてものすごく深く相手と対話してきますので、かなり熱いのです。撮影と共に変化があったのではないでしょうか。主演との交流が中盤以降、とても良かったです。

ハン・ミニョ役のキム・ジョリョン

ハン・ミニョ役のキム・ジョリョン

繊細な演技を見せてくれる俳優が多い中、かなり浮いた存在です。役が浮いてるのではなく演技が浮いてると言っても過言ではありません。人一倍、大袈裟で、しかも紋切り型の演技をされる女優さんでした。「え?そう?面白かったけど」と思われるかも知れませんが、技術としての演技、形として出てきた面白さは否定しません。しかし、内面としての人間臭さが出てくる面白さが私は個人的に見たかったのです。
「死」に対するリアリティ、「危険」に対するリアリティが薄いため、本気でシーンの中に生きている人とちょっと合わない部分が感じられました。彼女がもっと内面を掘り下げた演技をされたら、きっと最後のチャン・ドグスとのシーンはもっと心が揺さぶられるシーンになったはずです。厳しく指摘させてもらいましたが、その浮いた色がまた良かったのかも知れませんが・・・。

チャン・ドグス役のホ・ソンテ

チャン・ドグス役のホ・ソンテ

ハン・ミニョとの関わりの多い役ですが、この俳優さんは特に最後のシーンに関してはかなり心が動いていました。目がすべてを語っています。最初から憎まれ役でしたが、その演技は役を生きていて、しかも実はとても傷つきやすく感じたことを放出される演技なのです。最後は特に素晴らしかっただけに、ハン・ミニョとのやり取りは、演技としては彼の勝ちとなりました(勝ち負けではないですが・・・)。ちなみに、体重を増やしてこの役を全うされたそうです。

チョ・サンウ役のパク・ヘス

チョ・サンウ役のパク・ヘス

いやぁ、本気でしたよね、生きのこるために。ソウル大学出身で秀才な役ですが、生きる為なら何でもやる!という本気度が内面からしっかりと出ていて素晴らしかったです。中でも、自分の良心や倫理を押し殺して行動しながらも、どこかで傷ついている演技は素晴らしかった。予想通りの生き残りでしたが、人間臭さが滲んでます。

ソン・ギフン役のイ・ジョンジェ

ソン・ギフン役のイ・ジョンジェ

主役ですが、彼のルックスと役の性格ととてもマッチしていて、この物語の「良心」の部分として生きていました。とても柔らかい演技でした。1話目の家族とのやり取りはやや嘘くささがあるのですが、ゲームの世界に踏み入れると自然になっていくという不思議さがありました。最後の髪の色は誰の演出なのかな、とちょっと強烈でした。

「イカゲーム」の中のゲーム、ちょっとドラマ順に並べて考えてみた。

全9話のドラマの中で、数々のゲームが登場します。その順番に並べつつ、感じたままにコメントしてみました。日本と共通なものから韓国独自のものまで幅広い。

だるまさんが転んだ

この人形が怖い

これはアジア共通の子ども遊びなのでしょうか。このシンプルさが、逆に怖い。そして「だるまさんが転んだ」の鬼である子どもロボットがまた一層不気味な空気感を出していて、不快なのです。

カルメ焼き

カルメ焼き

韓国では、カルメ焼きを針で型抜きしていくゲームですが、日本ではカルメ焼きではなくもう少し硬い薄い板のようなモノを型抜きしていました。その名も「カタヌキ」だったような・・・。主にお祭りで燃え上がるものでした。一番難しいのは確かに「パラソル」。容赦なく撃ち殺されてく世界なのですが、ゲームそのものにはノスタルジーを感じました。

綱引き

綱引きは遊びというよりも、運動会ですけど。実はこのドラマ、この綱引きのシーンから一気に面白くなりました。個人戦からチーム戦に変化。人間ドラマが大きく動き出し、それぞれの個性が協力することによって良い結果を生み出すからです。一番弱そうなチームが、協力して勝つってやはり熱くなります。爺さんのオ・イルナム役が大きな存在感に!

ビー玉取り

ビー玉取り

このビー玉ゲームは日本にはあっただろうか。私は知らなかったです。ちなみにドラマを観ていればすぐに分かるルールなのでご安心を。このゲームはペアを組んで一緒に戦おうと思っていた相手が敵になるという急展開。一緒に頑張ろうと思っていた相手に勝たないと自分が命を落とす状況が生れます。このシーンは、アリとサンウ、ギフンと爺さん、セビョクとジヨンのシーンがドラマを大きく引き立てます。

石飛ゲーム

強化ガラスか普通のガラスか、高さ数十メートルの橋の上を歩くゲーム。これはゲームなのか?というところですが、ひと昔前のTV番組「風雲たけし城」の竜神池を思い出させてくれました。池に浮いた石の上を走って渡るが、そのうちの数個の石は池に沈む使用になっており、それを踏んでしまって池に落ちると脱落するというルール。昭和生まれの方ならきっと覚えているのではないでしょうか。それに似たゲームですが、順番通り人が進むことと、制限時間内でクリアするドキドキ感は後味の悪さがたっぷり生まれます。
余談ですが、演技ベタベタのVIPと呼ばれる外国人達が登場する当たりで変な空気を生んで面白い効果がありました。

イカゲーム

そして、オーラスのゲームこそが、タイトルとなっている「イカゲーム」。実はこの「イカゲーム」は韓国の子どもたちの遊びで、力と力の戦いのような一面を持っているようです。少し暴力的というか・・・。しかも、この遊びが一番意味が分からないっていうことが凄いんです。韓国では常識でも、世界的には一度か二度の説明でしっかりと理解するのが難しいのです。そういう意味ではよく企画が通ったなぁっと思わざるを得ないのですが、ルールが分からなくてもそんなことどうでも良くなってくるから不思議。
タイトルにもなっているこのクライマックスのゲームのルールが理解しずらいって逆に凄い。オープニングでも子どおがスローで動いていて解説されますが、とにかく分かりずらい。でも旅愁漂う映像が何だか良くて、最後のバトルはルールを越えて熱いのが伝わるのでOKなのです。

資本主義が生んだ格差社会について

この物語が行き過ぎた資本主義が生んだ格差を示唆しており、韓国の問題として先日ニュースになっているのを見ました。これは韓国だけの問題ではなく、日本の問題であり、世界の問題でもあり、GAFAなどの問題でもある。

この「イカゲーム」は、ゲーム参加者の過半数がゲーム続行を反対した場合、ゲームは終わるというルールがありますが、実際にそうなった展開の第二話。しかし、ゲーム続行を願ってまた舞い戻ってくる参加者たちの姿がありました。そして、次のようなニュアンスを漂わせてきます「現実の方が地獄だった」と。

このゲームで重要なルールとして、「過半数が賛成すればゲームはいつでも中止することが可能」というもの。つまり、議会制民主主義の構造を持っているのです。多数決の問題。民主主義が生きていればこの狂った歯車は止めることができる、という意味でもあるのではないでしょうか。或いは、過半数という数の力で簡単に民主主義を壊してしまいかねないことも見えてきます・・・日本の政治のように。このドラマが意図しているのはそんな議会制民主主義と資本主義のシステムの矛盾があるのかも知れません。そんな社会を変えるのは政治であり、必要なのはそれぞれの一票に違いありません。しかし、それだけでは資本主義の市場の暴走は止まらない。イカゲームで優勝した要因というのは、様々な運や出会いが原因である。と同時にこうも言えるのです、富裕層もまたゲームで幸運にも勝っただけだよ、と。謙虚なまでに分配に繋げていける社会を望むばかり。

まとめ

「面白さ」とは主観であって、その意味範囲も広い。この作品は私にとっては「interesting」な面白さというよりも、「fear」で「human drama」な面白さでした。
かなり話題をさらっている現状、アンチ「イカゲーム」な方もどんどんSNSなどを通じてアピールされてきています。かくいう私も「鬼滅の刃」は敢えて距離を置いて未だに観ていません。ちょっと流行るとアンチな気持ちが出てきてしまう気持ちは分かります。話題になっていることを知らず知らずに気になって見始めたから良かったのだと思います。前情報がほとんどない状況で視聴できたことに感謝。やはりこのblogのような情報は鑑賞前に観るのはよろしくないですよね(笑)
ちなみにシーズン2が動き出してると思いますが、あの赤髪が必要だったのかが気になるところです。
個人的には、行き過ぎた格差社会が我々にとっても身近な問題として捉えなおすことが出来るドラマであるとういことでおススメです。映画「パラサイト~半地下家族~」と併せてどうぞ。

About aritoo

アーティスト(俳優、脚本家、演出家、絵描き)として、感じたままを様々な媒体を通して放出。また芸能プロで演技講師に力を入れ、現在メソードアクティングを紐解きながら世界で通用する俳優を育成する。