
2021年8月24日、東京2020パラリンピックの開会式。
その様子をテレビ画面で観ながら、選手たちが運んでくる聖火に目がいく。
煌々と燃える炎は水素の力であって、二酸化炭素を排出しないと解説が訴えていた。
東京オリンピック・パラリンピックには懐疑的な気持ちを持っていながら、今日運ばれてきた聖火の炎に自分も少なからず貢献していることに嬉しさも感じたのも事実。矛盾した気持ちが心に同居しつつ、見つめた炎。
去る2021年8月20日、採火式のために東京都杉並区に運ばれた聖火。その聖火の受皿をデザインしたことが、少なからずこのパラリンピックに参加している気持ちを呼び覚ましたのは紛れもない事実。その気持ちをここに残しておきます。(炬火トーチを点火し、その火を炬火受皿へ移し、採火する流れ。その受皿のデザインです。)

目次
採火式とは?
聖火リレーで用いられるパラリンピック聖火は、イギリスのストーク・マンデビルと開催国内各地の複数箇所で採火される炎から生み出されます。炎は、人々がパラリンピックを応援する熱意の表れとされ、実際の炎に限らず、SNS等を活用したデジタルの炎も認められています。こうして各地で採火された炎は開催都市で一つに集火され、パラリンピック聖火として、リレーの形で開催都市を巡ります。
東京2020公式HP
パラリンピック聖火リレーは、ソウル1988パラリンピック競技大会で初めて実施されました。このリレーのルートは105km、合計282人のランナーがパラリンピック聖火を運びました。
その聖火の炎を各都市の主要場所で灯すイベントが、採火式となります。
パラリンピックの聖火の受皿をデザインすることになった経緯
私はこれまで杉並区のNPO法人TFFにアートイベントでお世話になってきた経緯があります。このblogでも掲載したBATA ART EXIBITIONもそのひとつ。その会議の中で、今回このパラリンピックの聖火の炎を置く受皿のデザインの話がありました。そして、そのデザイナー募集があったというのが経緯です。
デザインを引受けたことに対しての気持ちの矛盾
正直言うと、オリンピックはやっている場合ではないし、パラリンピックも同様にこのコロナ禍でやる意味があるのかという思いがあったのは事実。あらゆるイベントが緊急事態宣言で中止や延期になる中で、オリンピックは特別という雰囲気で例外的に催される不満やコロナ感染拡大のリスクを感じるからです。また、被災地復興のためという大義名分も分からなくなり、世界一コンパクトなオリンピックは過去最高のお金を使ったビッグイベントになってしまっている現状もあります。
「オリンピックに反対することは反日」のようなことを言葉にしてしまう元首相も信じられないが、まさにその元首相のウソ(アンダーコントロール)も方便スピーチが招致決定に貢献したこともまた私には納得できぬものがあります。私は、選手を責めているのではなく、開催に従事している方を責めるているのではなく、体制と背後にある気持ち悪さを責めているのです。
しかし、今回のようなオリパラに関わったデザインをするお仕事は、ひとつの挑戦として興味深いのもまた事実でした。その楽しみがデザイナーにあることは申し上げておきます。結果的に、依頼いただけたことは不安ながらともて嬉しくありました。感謝しております。
杉並区役所文化・交流課オリンピック・パラリンピック連携推進担当からのリクエスト
ちなみに、この受皿は杉並区のオリパラとしてのレガシーとして今後展示されるというお話。気持ちのうえでは自分で大丈夫かなという不安が入り混じっていました。
当初は「文化」「希望」「スポーツ」「平和」のテーマで各一枚ずつ製作するというお話。さすがに短い時間で4種類のデザインは私にとってハードルが高い。ちょっと私には難しいかもと思っていたところ、杉並区役所文化・交流課オリンピック・パラリンピック連携推進担当(以下オリパラ担当)の方より、この4つのテーマをひとつの受皿に盛り込んだ陶器のお皿を色違いで4つ製作するのはどうか、というお話をいただきました。
それは1つのデザインで4つのお皿を作ること。おかげで私は背負った重い荷物を少し軽くできた気分でした。
もちろん、快諾し挑戦することにしたのです。
試行錯誤を重ねてテーマをシンボル化していく作業
「文化」「希望」「スポーツ」「平和」をそれぞれシンボルマークにし、配置していくことを考えていきました。
「文化」のシンボル化

シンボルとしての「文化」が非常に悩みどころでした。シンプルに表現したいと熟考を重ね次のように文化を解釈。「文化」は「人の手」によって生み出されるもの。さらに「人の手」を動かすことで「ハートを動かす」ことに繋がるのが文化・芸術だ、と。そう捉えた中で出てきたのが人の手とハートのシンボルなのです。
「希望」のシンボル化

希望は太陽に象徴される光としました。また、向日葵のように光に向かって伸びるイメージです。
「スポーツ」のシンボル化

スポーツは、パラリンピックのピクトグラム風に考えてみました。しかし、「スポーツ」そのものの象徴としてのイメージにはならないため、最終的にはより「人が身体を動かすこと」に特化したシンプルなデザインに変更。
「平和」のシンボル化

平和の象徴。これ以外に特段アイデアを引っ張り出すようなことはしませんでした。シンプルが一番ですね。そして伝わることが大切。
そして、2つのデザインを提案しました。
受皿デザインVer.1

受皿デザインVer.2

その後、オリパラ担当から修正依頼あり
このデザインのどちらかをもとに受皿を製作する必要があります。しかし、このデザインを実際に陶器で焼き物として製作するのが、済美養護学校(杉並区)の子どもたち。それぞれの形を製作することは難しいというお話になりました。私はこのデザインをもとに各パーツの型を作って作成するものと思っていましたが、新しい型を作るのはとても難しい作業というお話を伺いました。
無知で申し訳ない気持ちでした。事前に確認しておくべきでしたね。そこで、市販のお菓子の型抜きで型をくり抜いて皿の上に置くことであれば可能です、というお声をいただきました。子どもたちができる範囲の中で組みあせたデザインの再リクエストがあったのです。
済美養護学校(杉並区)の図工の先生のご意見も踏まえ、再考。再度、市販のクッキーなどのお菓子の型で用意できるものから組み合わせてできるように修正図案を作成しました。
決定デザイン

このデザインが市販のクッキー型などをうまく組合わせて配置したものです。そして子供たちが型を抜いて製作してくれたのが最後の「まとめ」に添付した画像です(^_-)
まとめ
パラリンピックの開会式で聖火が運ばれてくるのを観た時、自分の仕事がここに繋がっていたのだなと実感しました。済美養護学校の子どもたちが頑張って製作してくれました。型抜きをして、各シンボルをお皿に貼って、素敵な色合いになりました。ちなみに、杉並区ですので「杉」マークをシンボル化しています。

オリンピックに対しては疑問符だらけな気持ちが私にはあります。しかし、デザインするという喜びはここにしっかりとありました。相反するところがあるかも知れません。その中でさえモノづくりの興奮は確かに存在しているのです。改めて、杉並区役所を訪れた際には、子どもたちとの共作である作品を拝見したいと思っています。パラリンピックが無事に閉幕することを願って…。とてもいい経験をさせていただいたと思っています。杉並区オリパラ担当の方々、NPO法人TFFの皆さん、済美養護学校の皆さん、本当にありがとうございました。





