モノローグのすすめ、持っている声を放出する方法


モノローグという言葉は聞いたことはあっても、実際どんな意味だろう?何だろう?ってきっと思うのではないでしょうか。独りの長台詞、或いは長い独り言、のように思っている方もいると思います。間違いでもないですが・・・

モノローグ=独白

と訳されます。相手がいない中で、自分の心情を告白していく表現、なのです。

デビッド・フィンチャー監督ドラマ「ハウス・オブ・カード
主演のケヴィン・スペイシー

シェイクピア作品を筆頭に古典戯曲にもありますし、現代戯曲にもよくあります。ちょっと前では、Netflixドラマ「ハウス・オブ・カード」の主役ケヴィン・スぺイシ―が、シーンの中で突然本音をさらけ出し、サラサラとモノローグするのが印象的で、古典を参考にした面白い演出でした。定番と言えば、主演・監督ウッディ・アレンの映画「アニーホール」ですよね。なので舞台をイメージする方も多いと思いますが、決してそんなこともないのです。

ウッディ・アレン監督・脚本・主演「アニー・ホール」
ダイアン・キートンとの掛け合いは最高です

私は、モノローグという表現形態は俳優トレーニングにとっても、俳優以外の方にとっても、自身の心体を通して声に乗せて放出するうえで、非常に有効なモノだと考えていますし、そのように実感しています。長く演技トレーナー(アクティングトレーナー)としてお仕事をしていますが、その事は俳優から、または俳優でない方からも、心体から発するモノローグの力を目の前で見せつけられてきました。

今回は、先日書き下ろした、短いモノローグを公開しつつお話をしてみたいと思います。なぜなら、このことを語れる人、教えてくれる人は、あまりいないからです。

個人的にモノローグが好きな理由

私は幸いにも作家としても自由に自分の言葉を台詞にする機会があります。また自分で言いたければ台詞に起こして、放出できるメリットがあります。自分の思うことを言葉(この場合は台詞ですが)にして、感じているままに表現できる事は心と体のバランスにおいてもとても重要です。それは、お客様や視聴者があってこその、表現でもありますが、思いのままの音が声として台詞が乗ったときの感覚は、個人の広がりを最大限感じさせてくれるのです。まさに宇宙の中で放出する楽器。大きな力を放ちます。

モノローグの胸騒ぎ @Arito Art
モノローグの胸騒ぎ @Arito Art

課題のモノローグ公開

今回、とある芸能事務所で使用したモノローグです。普段、使用している課題はあまり公開はしていないですが、このご時世にも当てはまるものがあるかもと思い、アップしてみます。

モノローグ 作:山縣有斗
画像が少し悪いですかね?ご了承下さい。
モノローグ 作:山縣有斗
画像が少し悪いですかね?ご了承下さい。


内容はシンプルに、ワークショップの為に書き下ろしたモノローグ台詞です。例えば、これが古典でシェイクスピアのリア王のモノローグだったら?恐らく、とっつきにくいかと思います。役のバックグラウンドやその直前まで経験した内容で出てくる音(声)は当然変化するのですから、厳密に言えば、俳優として準備する内容は大差ないと言えるかも知れません。
ただし、現代人のあなたのハートが乗っかっていくのは、シェイクスピアの台詞ではなく、こちらの方ではないでしょうか。

Vertion.A
What’s? Looking at you from that point of view, as if you were deciding me, it seems unpleasant.
Is my style bad? Is there a constriction in my waist? Is my chest small? Is my wording bad? I’m not cute?
Is it just right for a woman to silently walk three steps behind? Are you seriously saying that the meeting won’t go on because the woman talks? How long do you feel like staying in the Showa period?
You think you’re smarter, so you look down on a woman and make a fool of yourself. To be clear, it’s discrimination, prejudice, contempt, do you know? It’s all mixed.
How long have you been looking at people in your prejudice pattern? I want to tell you that you can only see a woman with such a sense of value.
I’m not a slave living in your rotten values, I’m a living human from the beginning! I’m free from the beginning.
Freedom.

Vertion.B
Don’t expect me because I’m asking you. Does a man have to lead a woman? Does a man have to have a high income? Does a man need the power to feed a woman? Will he be feminine? Does a man have to be strong? Is the man proud? Don’t cry, you’re a man?
To be honest, I’m already stuffy.
He’s bigger than me, so don’t compare them one by one, it’s extra care. Winners or losers? It doesn’t matter which one. Is it just a win or a loss? I didn’t want to participate in such a race from the beginning. Of the rules that someone has created, the one with the highest score is the best? Competition, competition, competition, how long should I keep fighting? Who is my enemy before that! I’ll say it clearly. I have no intention of participating in such a race anymore. I’m weak and fine, so I’m free.
Freedom.

台詞の覚え方

台詞をどうやって覚えますか?

一般の方からすると、あれだけの台詞を覚えるなんてすごいね、思うかも知れません。実際に舞台や映像を見て、そのような感想をされる方もいます。もし俳優がそのような感想を言われたら、きっと恥ずかしくなりますので、そのことは是非知っておいてください(笑)

例えば歌手に向かって、よく歌詞を覚えましたね?とか、会計士に向かって、よく計算できましたね?とか、スーパーの店員に向かって、よくレジ打ちできますね?と伝えることに等しいからです。

つまり、俳優に「よく台詞を覚えましたね、凄い」というのは、至極当たり前なことなのです。また、このような感想は『他に言及できるポイントがあなたの演技になかったので、それしか言えないです』という意味を根底に意味していると捉えるから、俳優としては辛いのです。もちろん、言葉通りで他意はないです、という事もある得るかも知れませんが…。

抑揚や言い方について考えますか?

台詞は、抑揚や言い方などを取っ払って、と先ほど記述しましたが、「じゃどうすればいいのですか?」と思うのではないでしょうか?詳しくはワークショップなどで直接アクティングトレーナーとして指導していますので、省略しますが、スラスラと楽々に台詞を言えるように覚えることです。これは台詞が長いとなかなか大変ですが、勝手な抑揚をつけて覚えてしまわないようにして下さい。

モノローグ 起きたままに音にしたい
@Arito Art

抑揚をつけないでどうやって表現するのか?

抑揚をつけるという表現方法は存在しているし、それを否定するつもりもありません。そのことをまず最初にことわっておきます。
では、抑揚をつけないでどうやって表現するのか、ということですが、端的に言えば「結果として抑揚がついてしまうようにする」ということです。どんな言い方になるのかは、誰にも分からないのです。それは監督や演出家にも分からない。イメージはしていても、実際に「あなた」という一個人である俳優(でなくても)からどんな音が飛び出してくるか分からない。それは至極当たり前のこと。感情は込めるものではなく、感情はつくるものではなく、結果的に出てくるもの、なのです。Why?How?の問答になってしまいますが、じゃどうやったらそんな風にできるのか?
それには、心と体を一致させて自然に音が乗るようなリラックスした状態で台詞を言えるようにすることです。ちなみに、それこそが俳優トレーニングでやっていくことなのです。

モノローグで湧き上がる感情
@Arito Art

リラックスした状態で台詞を言うとは?

それが俳優に必要なトレーニングになります。誰でも出来たら、そんなもの凄くもなんともないですよね。俳優だからこそ、日々のトレーニングを通して、自然な音色で表現される自分という楽器を磨き続けるのです。その俳優トレーニングは一にも二にもリラクゼーションから始まります。現在は芸能事務所や俳優育成学校などでアクティングトレーナーとして指導していますが、また一般に向けてワークショップをする際には是非ご参加下さい。オンラインでも時々企画してやっています。

Netflix「Giving Voice」邦題:内なる声が語ること、から刺激を受ける

あらすじ
 「Giving Voice (原題)」の舞台は、米国で最も称賛された劇作家の一人、オーガスト・ウィルソンの作品を題材に開催されるオーガスト・ウィルソン・モノローグ・コンペティション。厳しい戦いで勝ち進んでいく6人の学生の姿を追い、若い役者としての彼らの才能が見いだされる過程を描きます。全米で開催されるこのイベントは、舞台芸術の世界での活躍を夢見る公立学校の学生が対象で、「フェンス」「ピアノ・レッスン」など、ウィルソンの作品を課題に進められていきます。厳しくも達成感のある競争に身を投じる学生たち。彼らは、20世紀の米国で黒人が直面しがちであった体験をウィルソンが10年ごとに区切って描いた、アメリカン・センチュリー・サイクルと称される作品群のモノローグを演じながら、 自分や、周りの世界の見方を掘り下げていくことになります。

Netflix「Giving Voice」

名優デンゼル・ワシントンもこのウィルソンの舞台に出演しており、インタビューからも当時のワクワクさが伝わってくる。ブロードウェイに出演するデンゼル・ワシントンを見れることはファンにとってもたまらないライブの現場。
エージェントに何も理由を言われずウィルソンに会うように言われ自宅を訪問したのが最初の出会いだそうです。そんな事ってあるの??と衝撃ですが。日本でしかもマネージャーが「誰々の自宅に行って下さい。理由は聞かないでとにかく会ってみて」と言われたら「はい」とは簡単に言えないですが(笑)信頼関係が凄いですね。ちなみに、その後デンゼル・ワシントンが出演した「フェンス」は自ら彼自らが監督して映画にしている。こちらは2017年アカデミー賞助演女優賞を受賞した作品。

実はモノローグ大会を企画してみたい

日本にはモノローグの大会のようなモノが一般的にないと思われます。なので、これは助成など視野に入れつつ、ちょっと形にしてみたい企画です。審査委員には、勝手な要望として、藤井秀剛監督や、渡辺謙さんや、石井秀人(劇団ハイバイ)の方々などをお呼びして実現してみたい。そうでなくても、まずは私から初めてみればいいのかな、と思っています。書けば実現に向かうかもと思い筆にしました。

まとめ

モノローグは、その台詞と自分を一体化させた時のエネルギーの放出量がとても大きく、俳優でなくとも素晴らしい経験をもたらすツールだと実感しています。恐らく我々は、日常において自分をうまく表現することができなかったり、思ったことをなかなか口にできないのが現状で、苦虫を嚙み潰したようなシュチュエーションを何度も経験し我慢しているのではないでしょうか。飲み込んできたエネルギーは沈殿したまま、あなたの中に眠ってしまっているのです。それをスポーツで放出出来る人もいれば、趣味などで発散出来る人もいる。しかし、沈殿したまま出口を探している心体を持った人もいるのです。そんな方には、出口を用意する意味でも表現は大切なこと。

赤ちゃんの頃から私たちは感じたことをそのまま即表現したい衝動を持ち続けいるのです。徐々に蓋をするように抑えられて大人になっていく。実は、台詞というのはその想いを汲んで吐き出してくれる大切な形態なのです。あなたの井戸から湧き上がる水、時にマグマを表に吐き出していく流れの中で、その川の上に浮かべるのが台詞。波に乗った船(台詞)のうねりは、台詞の音の波。素直な気持ちのまま揺れて船(台詞)が運ばれていけば、力強く、ヒトのハートに刺さるのです。そして、結果的に心体のすっきり感を得ることができたりするのです。

このような話をすると、きっと全く共感できない台詞や意味が分からない台詞は出来ないのではないか?と疑問を持たれます。しかし、たとえ自分の琴線がまったく反応しないような意味不明の台詞だとしても、その台詞の裏に用意したモノで、同じ思いのたけを波にして船を浮かべることが可能なのです。
簡単ではありませんが、健康にもいい。そう思います。ひとまずここまで。

About aritoo

アーティスト(俳優、脚本家、演出家、絵描き)として、感じたままを様々な媒体を通して放出。また芸能プロで演技講師に力を入れ、現在メソードアクティングを紐解きながら世界で通用する俳優を育成する。