「どうしたら俳優になれるのでしょうか?」
時々、そんな質問を頂きます。 凄く、ざっくりな質問ですが・・・。この質問について、少しお答えします。
正直な話、「俳優」にライセンスはありません。ですので、「私は俳優です」と言ってしまえば、今日から、あなたは俳優なのです。
目次
あなたはどのような理由で俳優になりたいのでしょうか?
夏休みを前に、子供たちは色々と可能性を探しているのではないでしょうか。
新しい挑戦の中に“俳優”というお仕事が選択肢に入っている方も少なくありません。
社会人の方でも、ずっと俳優をやってみたかったけど・・・のみ込んできた夢がある方も多いのです。「ずっと我慢してきたけど俳優という仕事を、今やってみたい!」そんな衝動に駆られる方も少なくありません。
私は演技トレーナー(演技指導・俳優指導)の仕事をしています。これまでみてきた俳優は、プロ、セミプロ、初心者まで含め1000人以上。その経験からお伝えしていきますが、例えば、山縣WS(ワークショップ)や舞台のオーディションをした時には、このような動機で参加された方がいます。
「昔女優をしていて一度やめて主婦になったのですが、もう一度挑戦したくて来ました」
「 社会人辞めて、オーディションに来ました。 やってみないと分からないので挑戦したいです」
「親が応援してくれているし、 自分も俳優やって、人を感動させたいから来ました」
などなど、色々な方々と対話して来ました。
本当に俳優になりたい方に向けて
ただ、俳優には「質」があります。その「質」によってやるべきことが違ってきます。
あなたが、どんな俳優になりたいか、どうして俳優になりたいか、様々な要素が組み合わさって目指しているのがはたして本当に「俳優」なのか、あるいは本当は「俳優」でなくても良かったのか。挑戦してみて、なりたいのは俳優じゃなかったと気が付くのもまた大きな収穫でしょう。演技のトレーニングに挑戦しながら、自分の気持ちを見極めていくことも大切な人生勉強に違いありません。
確信を持って言えることは、本当に俳優になりたい、と思っているのであれば日々の俳優トレーニングや勉強が必要ということです。
本当に俳優になりたい。そう思っていることを前提に、俳優になりたいという方の中で、どうしたらいいのか分からない方に向けて少しだけ道しるべを残しておきたいと思い、これから明記していくことにしました。
あなたは、本当に俳優になりたいの?有名になりたいの?ちゃんと自分の胸に聞いてみよう。
まずは確認しておきたいことですが
あなたは、
なんでもいいからとにかく有名になりたいのか
あるいは、マルチタレントのようになりたいのか
俳優になりたいのか
これは、一緒くたにできないのです。
なぜなら、バラエティー番組に出演して面白い事を言う人になる事と、番組でコメントしたり歌ったり踊ったりして出演する仕事と、俳優として、役を生きる事とはまったく努力の方向が違うからです。
もちろん、初めての挑戦で映画のキャスティングオーディションに参加するだけでも勇気が必要だと思います。そのトライを私は応援していますし、妨げるつもりはありません。是非、それはそれで経験してみて欲しいこと。しかし、演技トレーナーとしては、さらにそこから先のビジョンも問いたいと思っています。
俳優で有名になりたいの?それともいい演技をしたいの?あなたはどっち?
少し細かい話になりますが、触れておきます。
俳優で有名になりたい人と、俳優としていい演技を追求したい人と、どういうわけか、努力の進行方向が違う場合が多いのです。(どちらも同時進行でゆく道もあるのも事実ですが・・・マネージメントやセルフプロデュース力が絡んできますので置いておきます。) つまり「俳優で」有名になりたい人は、目的は有名であり「俳優」が目的ではない部分が少なからず垣間見られます。
アイドルやタレントさんの演技に憧れるのと、役所広司さんや、渡辺謙さん、香川照之さんの演技に憧れるのとでは大きく目指すものや努力が違うからです。(アイドルやタレントさんが本気で演技をやっていないということにはなりませんので、あしからず申し上げておきます。)
二者択一ではないですが、このことは一利あるとは思いませんか?
アイドルやタレントさんの演技に憧れるのと、 アル・パチーノやロバート・デ・ニーロ、ケイト・ブランシェット、シャーリーズ・セロンのようになりたいのかでは大きく目指すものや努力が違うと思いませんか?
そして、そんな世界的にも素晴らしい俳優と共演する気で準備する人とそうでない人とのビジョンの差や見ている演技の質の差は歴然なのです。
失礼な言い方ですが、例えば、草野球を観るのとメジャーリーグを観るのとでは大きく違います。また、草野球とメジャーリーグの違いを認識しているのと認識していないのでは目指す世界が違うのです。
ですので、ここでは、いい俳優になりたいを前提に進めていきますね。
俳優として活動していくためにどうしたらいいの?
では、俳優として活躍するにはどんな選択肢があるのでしょうか?おおざっぱに言えば、下記のような選択肢があります。
- 芸能事務所に所属する
- 養成所や演技・映画学校に入る
- 劇団に入る
- 自主映画や一般公募の映画オーディションに参加する
- アクションや殺陣の師匠を見つけて修行する
- 映画を創る側になってから俳優をする
- 業界の集まりに色々と顔を出してきっかけを得る
もちろん、これ以外にも、きっと色々な道があると思いますが、ざっくりと上記の7つとします。
1.芸能事務所に所属する。俳優は芸能事務所に所属する必要があるのか?
映画やテレビ、CM、商業舞台で活躍する俳優の多くは基本的には事務所に所属しています。
商業的・ビジネス的な世界では、もしあなたに何かあった時、誰が責任を取れるんですか?というのが前提にあります。
例えば、あなたが現場に遅刻しそうになった時、あなたと連絡が取れなくなった時、誰に連絡を取ったり、文句を言えばいいですか?また、急な病気や不祥事で、あなたが役を降板した時に誰が賠償してくれるのですか?という質問に答えてみると分かりやすい。その答えこそが、芸能事務所なのです。
お仕事という約束事の中で、たとえ本人がどこかに消えた(消息を絶った)としても、遅刻をしたとしても、ちゃんと責任を持って対応してくれるバックグランド(芸能事務所)があるということは、起用する側(製作側)にとっては(当たり前のことですが)安心材料であり、とても重要な事なのです。
広告代理店、スポンサー、いろんな利権が絡んだショービジネスの世界で、あなたを安心して起用してもらうために 最低限必要なのが芸能事務所ということに他なりません。
芸能事務所に所属していなくても映画やテレビに出演できるのか?
答えはYes。
もちろん、事務所に所属せずにフリーで活動しいる俳優もいます。その場合は、出演交渉やギャラの補償、保険など 様々な事をすべて自分で対応していくことになります。個人の信用のみで、プロデューサーと対話することになります。既に何度か出演をしていて信頼関係が築けている場合、採用されることも多くあることもお伝えしておきます。つまり、監督の一押しやプロデューサーの一押しで、フリーの俳優の方でも役をもらう事があるということです。
どうしたら事務所に所属できるのか?
芸能事務所がそれぞれのHPや、雑誌などで公募している“事務所所属オーディション”に応募したり、業界関係者(友人や家族や知り合いを介して)の紹介などで所属します。
基本的は一般公募で大手の芸能事務所が所属オーディションをすることはあまりありません。業界に強い事務所などは関係者の紹介で「この子をお願いできませんか?」と預けたり、著名人の○○の息子さん、娘さん、という事で 親と同じ芸能事務所に所属したりします。
2.養成所や演技・映画学校に入る。
養成所やタレントスクールは、映像(映画・テレビドラマ)関係を主軸に俳優をしたい、 有名になりたい、そんな気持ちの方が多くきます。公募は、こちらもHPや雑誌など。
養成所とは、週何回か、月何回か、演技やダンスなどレッスンを受けながら俳優としての基礎を学ぶために通うところ。
映画学校(専門学校など)とは、授業スタイルで週・又は月に数コマの授業を取って俳優としての基礎を学ぶために通うところ。ここでよく基礎と言われるのは、ダンス、発声、脚本の読み方、業界礼儀作法などがほとんどです。
どちらも共通することは、あなたがお金を払う、ということ。
レッスン費、授業費、所属費用などが発生します。
気を付けて欲しいポイント
芸能所属俳優オーディションを受けに行ったり、映画出演オーディションを受けに行ったあと、後日このような合格通知・不合格通知が届きます。
「合格おめでとうごじます 又は 今回は残念ながら不合格となりました
ただし、現状ではまだまだすぐに活躍するのは難しい為、 当社のレッスンを1年受けていただき、審査オーディションで合格した場合に、正式に所属させて頂きます。」
上記のようなお手紙を受け取った方も多いのではないでしょうか。
いわゆる「当社のレッスン」を受講中の期間においても、俳優のお仕事が出来ると判断した場合はオーディションや出演依頼をします、というスタンスも多い。ここで「怪しい」と辞める人もいれば、 「チャンスなんだ」と思ってお金を払ってレッスンを受ける人もいます。確かに・・・お金を集める為に生徒を増やす養成所や学校はあります。夢を商売にして成り立つ部分が養成所にはあることは否定できません。しかし、レッスンがあなたにとって大切なものになる可能性も多いにありますので、システムはどうであっても内容を否定することはできないのです。
俳優が養成所で騙されないために、行動して欲しいこと。是非、次のことを伝えて下さい!
たとえ審査した側が甘い言葉をささやいたとしても、将来の約束は誰も出来ないのです。そんな甘い言葉に騙されない為に、おすすめしたいのが
『ワークショップ、レッスンの体験』をさせてもらう
という事です。何をやっているか全く知らないで、「当社のレッスン」にお金を払って言われるがまま受動的にレッスンを受けるから騙されるのです。大事なのは「当社のレッスン」の中身。この提案をしてみて、拒否するようなところがあるとすればその理由を確認してみて下さい。企業秘密のレッスンももちろんあるかも知れませんが、多くは体験レッスンを推奨しています。また、そもそも体験レッスンを嫌がるところは、俳優を本当に育てようと思っているのか心配ですと思わざるを得ない。
演技の秘密を教える事になるので断ります、と言うところがあるとしたらその芸能事務所の方と次のことを相談して欲しいのです。芸能事務所スタッフの方と話すのではなく、演技講師の人とデスカッションする機会を頂くような相談をしてみて下さい。
芸能事務所の方が演技講師をしているわけではない可能性は高いです。多くは外部から講師を呼んでいるのが実情なのですから。あなたの熱意ゆえのリクエストに何かしらの方法で応える事がまったく出来ない養成所やスクールは遠慮した方がいいかも知れません。
3.劇団に入る。(または演劇のワークショップを受ける)
大きな劇団や商業の劇団であれば、芸能事務所兼劇団、というところもあります。小劇場を中心に活動している劇団であれば、実はフリーでいる俳優もたくさんいるのが現状です。劇団はHPや募集サイトでワークショップ参加者募集、劇団員募集、などでよく応募をしています。演劇の舞台を観に行けば、必ず劇団員・スタッフ募集のチラシが入っているくらい募集しています。
つまり、門戸は広く解放されているのです。ただし、有名になりたい、というモチベーションではきっと、この先は大変であることは想像に難くありません。なぜなら、自分を演技というツールで表現することや、演劇で他者と協力しながら活動し俳優として生きること、それが好きで切磋琢磨している方が多いからです。日常の多くの時間を割くことになります。
また、社会人劇団などでは、土日のみ活動している劇団もあったり、小中学校の体育館や教室で公演をする専門の劇団があったり、色々なスタイルがあります。普段お仕事を持っている方なら活動時間を優先順位に入れて選択するのも良いかも知れません。
あなたは、きっと色々な選択肢で探す事もできるでしょう。ワークショップもたくさん募集があります。体験という意味でも、自分自身を試す事ができる機会になることは間違いありません。
劇団や団体によって、演技や演劇の方向性が全然違います。リアルな演技を求めるところもあれば、喜劇のお笑いを追求するところもあれば、劇画タッチな演技を求めるところもあれば、即興演劇(インプロビゼーション)を探求するところもあります。
収入はありますか?
あるものないもの、あります。
特に商業演劇以外の舞台の難点としましてはなかなか収入に繋がりにくいといったところ。舞台公演ならチケットノルマがあったり、 キャッシュバックが小さかったりなどです。演劇の舞台は稽古時間もたくさん必要ですので、公演前の1ヵ月前、2ヵ月前から、時間を拘束されていきます。その分、出演者やスタッフとの関係が密になりますので人としても色々と勉強になることは間違いありません。また、団体や公演によっては、1ステージ、〇〇円(合計10ステージの場合、○○円×10ステージ)、 という契約をする事もあり得ます。そして、そこから芸能関係者の紹介などで商業演劇や、芸能事務所所属、テレビ出演と活躍の場が増える事もあります。私の知り合いのプロヂューサーは、誰かいないかと小劇場を見たりすると言っていました。事実、そこから仕事に繋がった俳優もいます。
4.自主映画や一般公募の映画オーディションに参加する
学生の卒業作品が俳優を探していたり、自主製作映画の制作陣や監督、テレビドラマの助監督、などなど、映画が好きで勉強していたり、現場で修行したりしている方はたくさんいらっしゃいます。そして、自分の映画を撮りたい。そんなふうに志を持った方はたくさんいらっしゃるのです。
低予算、自費出資、クラウドファンディング、などのお金で何とか映画を撮影していたりします。国内外の映画祭に出品したりとフィールドを広げている方も多くいます。
俳優にもギャラがたくさん払えなかったり、交通費のみだったりしますが・・・俳優としての仕事をするチャンスは転がっています。そして、制作陣はギャラはあまり払えなくとも、何としてでもいい俳優を探しています。公募雑誌や公募サイトで常に募集していますので是非調べてみて下さい。そこに飛び込むこともまた、俳優として活動する為の大きな一歩になると思います。
5.アクションや殺陣の師匠を見つけて修行する
私の友人もそうですが、アクションを指導するクラブに所属しています。その中で、アクションが入る映画やドラマのアクション監督をクラブの方が務めた場合、クラブ所属の方が出演する機会も多いにあるのです。そこから映画やドラマ関係者繋がり、俳優としてのお仕事を得る場合があります。アクションが大好きであれば、是非、視野に入れて欲しい道です。
6.映画を創る側になってから俳優をする
これは「4.自主映画や一般公募の映画オーディションに参加する」でも記述した内容に近いですが、映像現場のスタッフをしながら、俳優として活動することを視野に入れている方もいます。現場に多くいることで、俳優として必要なモノを感じつつ、生かそうと努力していくということ。
当然ながらスタッフとして映画やドラマの関係者と知り合っていく機会に恵まれますので、芸能事務所関係につながっていく可能性もなくはありません。すべてはあなたの対話能力次第でもあります。
7.業界の集まりに色々と顔を出してきっかけを得る
これは可能性が低くもありますが、場合によっては有効かも知れません。私も上京したての頃、芸能界の集まりがあればよく顔を出していました。顔を覚えてもらうことがまず大切と考えたからです。お酒がある場所というのは、それだけ相手との距離が縮まりやすいのも事実。監督や制作の方と知り合うチャンスもあれば、俳優と知り合うチャンスでもあります。俳優から芸能事務所関係に繋がる可能性もなくはありません。
ただし、お酒の席ですので、結局相手方が覚えていないなんてこともあったりしますので注意が必要です。
俳優になりたい、あなたに求めたいもの
色々な選択肢が、俳優という1つの選択肢の中にあります。しかし、大切なのは、あなたのモチベーションなのです。私の経験からになりますが、残念ながら、何もしなくてもひょいっとチャンスもらって映画やドラマに出演して、いい感じに演技できる、とどこかで思っている方をよく見かけます。いわゆる努力なしのポジティブシンキングでしょうか。
また、普段から映画やドラマで演技をよく観察していない、そもそも映画を観ていない、クオリティの高い作品を知らない、名優を知らない、という方はざらです。なぜでしょうか。
実は、もっとも俳優は努力をしないと言われている職業でもあります。感性だから努力する必要がない、感覚が大事だから練習しなくていい、努力は感覚を磨くことだと勘違いしているのを目にします。それは正式には勘違いというよりも、努力の仕方を知らないのです。
もう一度言います
努力の仕方を知らない俳優が多いのです。
テニスプレイヤーは毎日練習します。野球選手も素振りやノック、様々毎日メニューを積み重ね、バンドマンは楽器の練習をし、ヴォーカリストは歌のレッスンをすることはもはや当たり前。
では、俳優は??何をしますか??
残念ながら、多くの方がうまく答えることができません。俳優以外のアスリート達の内容ほどに確信を持って答えれないのが現実なのです。この状況は日本独自なのかも知れませんが、非常に残念な事実です。
努力なくして俳優をしていくことは、例えるならば「泳ぎ方を教えずに、荒れた河に投げ落として、泳いで向こう岸まで渡って来い!」 と言っているようなもの。俳優たちは、何とかその場しのぎで乗り切り、俳優のツールをちゃんと勉強しないまま独自の泳ぎ方(フォーム)を身につけて何とか乗り切るのです。その演技力に裏付けがなく自分の演技に不安を持ちながら、心配しながら頑張っています。はっきり言いますと、ルックスに任せたスカウトが横行し、いきなり俳優デビューし、苦労する方々を目にします。可哀そうでなりません。
また、多くの現場は、リアルな演技、本当の自分の心を使う演技、それを求めていながら、この業界もどうしたらそれが手に入るのか、分かっていないと感じています。
まとめ
俳優がアーティストとして生きるためのツールは、ひとつではありません。
それは、 メソードアクティングの中にあります。
或いは、ベラシステムの中に。
或いは、イギリス式の俳優トレーニングの中にあります。
世界中で活躍する俳優たちは、その努力の上に立っているのです。
※山縣WSではメソードアクティングを紐解きトレーニングしています。
だから、どうか俳優として生きていきたい方は、色々な演技ツールの選択肢の中で、これだと思えるものを探して、見つけてトレーニングして欲しいと思っています。これは有名になるための努力ではありません。俳優になる為の努力なのです。そして、その過程での発見の多くは、あなたが俳優でいようと、それ以外の道に進もうと、きっと人生を豊にしてくれるものとなります。
この記事があたなの素敵な選択の役に立てれば幸いです。
Arito Yamagata(Arito Art )
One thought on “どうしたら俳優になれるのか。俳優になるための7つの方法!”
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